シリーズ第2回 免税対象と購入者要件はどう整理されたのか―リファンド方式に伴う制度設計の考え方―

税理士
水色 シンプル イラスト ビジネス 解説 はてなブログアイキャッチのコピー - 1

前回は、令和7年度税制改正により輸出物品販売場制度がリファンド方式へ移行する背景と、その全体像を確認しました。
第2回では、制度改正に伴って整理された「免税対象物品」と「免税購入者要件」について解説します。

免税制度において、何が免税対象になるのか、誰が免税を受けられるのかは、実務の出発点となる重要な論点です。
今回の改正では、これらの考え方がリファンド方式に合わせて再整理されています。

免税対象物品の考え方の変化

現行制度では、免税対象物品は「一般物品」と「消耗品」に区分され、それぞれ異なる要件が設けられていました。
消耗品については、用途制限や購入上限額、包装方法など、細かな実務ルールが定められていました。

リファンド方式への移行に伴い、こうした区分は廃止され、免税対象物品は原則として一体的に整理されます。
制度上の区分を簡素化することで、販売現場での判断負担や区分誤りによるリスクを軽減する狙いがあります。

区分廃止が意味する実務上のポイント

一般物品と消耗品の区分がなくなることで、販売時に「どちらに該当するか」を判断する必要はなくなります。
これにより、特に消耗品を多く扱う事業者にとっては、実務負担の軽減効果が期待されます。

一方で、免税対象であるかどうかの判断自体が不要になるわけではありません。
あくまで「免税対象物品としての要件を満たすか」という観点での確認は引き続き必要となります。

購入者要件の基本的な枠組み

免税購入者の要件については、制度の根本的な考え方自体は大きく変わっていません。
免税の対象となるのは、引き続き外国人旅行者など、一定の要件を満たす者に限定されます。

ただし、確認方法や管理方法は、リファンド方式に合わせて整理されています。
購入者が免税対象者であるかどうかの確認は、旅券情報等を基に行われ、その結果は電子的に記録されます。

電子的管理への移行と確認実務

今回の改正では、免税販売管理システムを前提とした情報管理が強化されています。
購入者要件の確認結果や購入記録情報は、システムを通じて管理され、税関での輸出確認や返金手続と連動します。

これにより、販売事業者が紙ベースで記録を保存・管理する場面は大幅に減少することになります。
一方で、入力内容の正確性やデータ管理体制の整備が、これまで以上に重要になります。

購入時確認と免税成立の関係

リファンド方式では、購入時点では免税は成立しません。
購入時の確認はあくまで「返金対象となり得る取引かどうか」を確認する位置づけになります。

実際に免税効果が生じるのは、購入者が国外へ持ち出し、税関で輸出確認を受けた後です。
この構造を理解していないと、販売時の説明や実務対応に混乱が生じるおそれがあります。

現行制度との考え方の違い

現行制度では、販売時に免税が成立するため、購入者要件の確認が免税適用の決定行為でした。
リファンド方式では、購入者要件の確認は返金手続の前提条件の一つに位置づけられます。

この違いは、制度理解だけでなく、販売現場での説明や顧客対応にも影響します。
事業者としては、免税制度の仕組みが変わったことを前提に、説明方法を整理しておく必要があります。

結論

令和7年度税制改正により、免税対象物品の区分は簡素化され、購入者要件の管理は電子化を前提とする形に整理されました。
制度の考え方は、販売時の判断に依存する仕組みから、データと事後確認を重視する仕組みへと転換しています。

次回は、リファンド方式の具体的な実務フローについて、販売から返金までの流れを整理します。
制度を「手続」として正しく理解することが、実務対応の精度を高めることにつながります。

参考

・東京税理士協同組合 教育情報事業配布資料
「令和7年度税制改正関係(輸出物品販売場制度・リファンド方式)」


という事で、今回は以上とさせていただきます。

次回以降も、よろしくお願いします。

タイトルとURLをコピーしました