法人税申告では、申告書別表上の調整項目が多くなるほど、ミスが生じやすくなります。
特に、受取配当等の益金不算入、欠損金の繰越控除、交際費等の損金不算入は、会計処理と税務処理が一致しない場面が多く、税務調査で確認されやすい分野です。
第4回では、金額自体は大きくなくても、制度理解の不足がそのまま否認につながる論点を整理します。
受取配当等の益金不算入の基本的な考え方
受取配当等の益金不算入は、法人間での二重課税を排除するための制度ですが、
すべての配当が対象になるわけではありません。
税務調査では、
- 配当の「出所」
- 株式の「保有区分」
が重点的に確認されます。
誤り① 外国法人からの配当を益金不算入にしている
外国法人から受け取る配当は、原則として益金不算入の対象外です。
国内法人からの配当と同じ感覚で処理していると、否認されます。
誤り② 投資法人・特定目的会社からの配当を含めている
投資法人や特定目的会社からの分配金については、
受取配当等の益金不算入規定は適用されません。
証券会社の入金明細だけを見て一律に処理している場合、
この誤りは非常に起こりやすくなります。
誤り③ 投資信託の分配金の取扱いを誤っている
証券投資信託の収益分配金は、一定時期以降、全額が益金算入となっています。
過去の取扱いを前提に、益金不算入としているケースは、調査で確実に指摘されます。
欠損金の繰越控除での注意点
欠損金の繰越控除は、制度が何度も改正されており、
発生年度ごとに取扱いが異なる点が特徴です。
誤り④ 繰越期間を超えて控除している
欠損金の繰越期間は、発生した事業年度によって異なります。
期間管理が曖昧なまま、古い欠損金を控除している場合、
税務調査では時系列で整理され、否認されます。
誤り⑤ 控除限度額を超えて控除している
中小法人等以外の法人については、
欠損金の控除限度額が「所得金額の一定割合」に制限されています。
赤字が続いている法人ほど、
この限度額管理が形骸化しやすく、調査対象となります。
交際費等の損金不算入での典型ミス
交際費の判定では、
期末資本金等の額の計算が重要なポイントになります。
誤り⑥ 期末資本金等の計算を誤っている
資本又は出資を有しない法人については、
期末資本金等を独自の計算式で算定します。
この計算を誤った結果、
本来は対象外であるにもかかわらず、
中小法人向けの定額控除を適用しているケースが見られます。
税務調査の視点から見た共通ポイント
受取配当、欠損金、交際費はいずれも、
- 会計処理と税務処理の差
- 年度・区分ごとの整理
ができているかどうかが問われます。
「前年と同じ処理をしている」という理由だけで継続すると、
制度改正や前提条件の変化に対応できなくなります。
結論
申告調整項目は、金額よりも考え方の誤りが問題になります。
第4回では、
- 配当の性質
- 欠損金の管理
- 交際費の判定基準
といった、積み重なると大きな差になる論点を整理しました。
次はいよいよ最終回として、
本シリーズ全体を横断する総まとめを行います。
参考
- 東京税理士会 研修資料
「誤りやすい事例等及び令和7年度法人税関係法令改正のポイント」
という事で、今回は以上とさせていただきます。
次回以降も、よろしくお願いします。
