税務調査の場で言ってよいこと/言わない方がよいこと― 個人事業主が損をしないための実務的な言葉選び ―

税理士
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税務署とのやり取りでは、
「何を言うか」よりも
「どう言うか」「言わないか」
が、その後の流れを左右することがあります。

文書、電話、署内調査、いずれの場面でも、何気ない一言が
・確認事項を増やしてしまう
・話をややこしくしてしまう
原因になることも少なくありません。

本記事では、税務署とのやり取りの場で、言ってよいこと/言わない方がよいことを、実例を交えて整理します。

大前提:求められているのは「事実」

まず押さえておきたいのは、税務署が求めているのは感想や反省ではなく、
・何が
・いつ
・いくら
・どの資料に基づいて
処理されているか、という事実関係です。

この前提を外さなければ、対応は過度に難しくなりません。

言ってよいこと①「確認してから回答します」

その場で即答できない質問に対しては、
「確認してから回答します」
「帳簿を見て折り返します」
と伝えて問題ありません。

【よい例】
「今すぐ正確な数字が出ないので、帳簿を確認してから改めて回答します」

【避けたい例】
「たぶんこのくらいだったと思います」

推測で答えると、後で数字が違った場合に説明が難しくなります。

言ってよいこと②「分からないことは分かりません」

分からないことを、無理に埋める必要はありません。

【よい例】
「当時の判断理由については、記録が残っていないため、今は分かりません」

【避けたい例】
「昔のことなので適当に処理していました」

「分からない」と「いい加減にやっていた」は、意味が大きく異なります。

言ってよいこと③「事実として修正します」

計算ミスや認識違いが明らかな場合は、
事実として認める方が、結果的にスムーズです。

【よい例】
「確認したところ計算誤りがありましたので、修正が必要だと思います」

【避けたい例】
「そんなに大きな問題ではないと思いますが…」

評価や感想を加える必要はありません。

言わない方がよいこと①「みんなやっている」

非常に多いのが、このタイプの発言です。

【避けたい例】
「同業者も同じ処理をしています」

税務調査では、他人の処理は一切関係ありません。
自分の申告が適正かどうか、それだけが判断対象です。

言わない方がよいこと②「知らなかった」「初めて聞いた」

正直な気持ちでも、表現には注意が必要です。

【避けたい例】
「そんなルールがあるとは知りませんでした」

【言い換え例】
「当時はその認識が不足していました」

「知らなかった」という言い方は、不要な誤解を招くことがあります。

言わない方がよいこと③ 話を広げる説明

聞かれていない背景説明は、控えた方が無難です。

【避けたい例】
「実はこの年、他にもいろいろあって…」

善意の説明が、新たな確認事項を生むこともあります。
質問されたことに、必要な範囲で答える。それが基本です。

言わない方がよいこと④ 感情的な発言

不安や緊張から、つい感情が出てしまうこともありますが、
感情的な発言は、調査を前に進めません。

【避けたい例】
「そんな細かいところまで見るんですか」
「そこまで疑われるんですね」

事実関係と切り離して考えることが大切です。

実務上のコツ:一文は短く、事実だけ

税務署とのやり取りでは、
・一文を短く
・主語と数字を明確に
・評価や感想を入れない

これを意識するだけで、やり取りはかなり整理されます。

結論

税務調査の場では、
「うまく話す」必要はありません。
必要なのは、事実を、必要な範囲で、正確に伝えることです。

言ってよいことは、
・確認する
・分からないと伝える
・事実として修正する

言わない方がよいことは、
・推測
・感情
・余計な背景説明

この線引きを意識するだけで、調査対応は大きく変わります。
日頃の帳簿管理と同じく、「言葉の管理」も、個人事業主の大切な実務の一部です。

参考

・税のしるべ「令和6事務年度の所得税調査等の状況」(2025年12月15日)
・国税庁「所得税及び消費税調査等の実施状況に関する公表資料」


という事で、今回は以上とさせていただきます。

次回以降も、よろしくお願いします。

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