2026年度税制改正 第8回(地方税制編)都市と地方の税収格差は是正できるのか― 固定資産税という新たな論点

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2026年度税制改正大綱では、家計支援や企業減税が注目を集めましたが、もう一つ重要な論点があります。
それが、都市と地方の税収格差です。

これまで、税収格差是正の議論は主に法人住民税や法人事業税を対象としてきました。
今回、新たに浮上したのが、固定資産税をめぐる是正措置です。

本稿では、なぜ今、固定資産税が論点となったのか、どのような是正が検討されているのかを整理します。

都市と地方の税収格差とは何か

税収格差とは、自治体ごとに税収の水準が大きく異なる状態を指します。
特に東京都は、企業や人口が集中していることから、他の自治体と比べて税収が突出しています。

これまでも、法人関連税については、国が一定の調整を行い、都市部の税収の一部を地方に再配分してきました。
一方で、固定資産税については、各自治体の重要な自主財源として、原則として手が付けられてきませんでした。

なぜ固定資産税が対象となったのか

今回、固定資産税が議論の対象となった背景には、地価上昇の地域差があります。

東京都心部では、再開発や海外からの投資を背景に地価が上昇し、固定資産税収が大きく伸びています。
一方、多くの地方では、人口減少や地価下落により、税収の伸びが期待できません。

土地の面積で見れば、東京23区が全国に占める割合はわずかです。
それにもかかわらず、固定資産税収では非常に大きなシェアを占めています。

この構造が、地方財政の不安定さを一層深めているとの問題意識が、今回の議論につながりました。

検討されている是正の方向性

政府・与党が検討しているのは、東京23区の土地にかかる固定資産税の一部を、全国の自治体に配分する仕組みです。
現時点では具体的な制度設計は固まっておらず、結論は2027年度以降の税制改正に先送りされています。

固定資産税は、市町村にとって安定的な基幹税であり、その扱いを変えることは地方税制の根幹に関わります。
そのため、慎重な議論が求められています。

東京都の反発と政治的な難しさ

固定資産税の再配分については、東京都や都選出の国会議員から強い反発があります。
都の税収が減れば、行政サービスや都市整備への影響が避けられないからです。

一方、地方側から見れば、税収格差の是正なしに持続可能な行政運営は難しいという切実な事情があります。
都市と地方の利害が真正面から衝突するテーマであり、合意形成は容易ではありません。

地方財政の持続可能性という視点

今回の税制改正大綱で固定資産税が取り上げられたこと自体、地方財政の持続可能性に対する危機感の表れといえます。

人口減少が進む中で、地方が自立的に税収を確保するのはますます難しくなっています。
都市と地方の役割分担や、税の再分配のあり方を中長期的に考える必要があります。


結論

2026年度税制改正では、固定資産税を通じた都市と地方の税収格差是正という、新たな論点が示されました。
具体的な結論は先送りされたものの、これまで避けられてきたテーマに踏み込んだ意義は小さくありません。

今後は、地方の持続可能性と、都市の行政需要の双方をどうバランスさせるかが問われます。
税制改正は、単なる減税や増税ではなく、国のかたちそのものを映し出す制度であることを、改めて意識する必要があります。


参考

  • 日本経済新聞
    「都市と地方の税収格差、固定資産税も是正検討」
    「物価高・ゆがみ是正を意識 税制こう変わる」

という事で、今回は以上とさせていただきます。

次回以降も、よろしくお願いします。

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