2026年度税制改正 第7回(財政・制度編)減税優先の代償― 財源なき税制改正はどこへ向かうのか

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2026年度税制改正は、家計支援や企業支援を前面に打ち出した内容となりました。
年収の壁の引き上げ、設備投資減税、研究開発減税、NISA拡充など、減税・優遇策が幅広く盛り込まれています。

一方で、今回の改正を通じて繰り返し指摘されているのが、財源の問題です。
減税は決まったものの、その裏付けとなる安定的な財源は十分に示されていません。

本稿では、2026年度税制改正を財政の視点から整理し、「減税優先」の代償について考えます。

今回の税制改正における減収規模

今回の税制改正による減収規模は、相当なものになります。
年収の壁引き上げを中心とした所得税減税だけでも、数千億円規模と見込まれています。

これに加え、設備投資減税や研究開発税制の拡充による法人税の減収もあります。
全体として、減税による税収減は一時的とはいえ、財政に無視できない影響を与えます。

財源確保が後回しにされた理由

今回の改正では、減税の一方で、財源確保は先送りされました。
政府・与党は、税収の自然増を背景に、当面は対応可能と判断したとみられます。

物価上昇や賃金上昇により、国の税収は近年、過去最高水準を更新しています。
こうした状況が、減税を選択しやすくした面は否定できません。

しかし、税収の自然増は恒久的なものではありません。
景気の変動や金利上昇の影響を受けやすく、将来にわたる財源としては不安定です。

国債依存と金利上昇のリスク

財源が不足すれば、最終的には国債発行に頼らざるを得なくなります。
すでに日本の財政は、国債への依存度が高い状態にあります。

足元では、長期金利の上昇も見られます。
金利が上がれば、国債の利払い費が増え、将来の予算を圧迫します。

減税による短期的な景気下支えと、金利上昇による中長期的な財政負担は、常に表裏一体です。

増税・見直し項目は十分だったのか

今回の税制改正では、富裕層課税の見直しや、賃上げ税制の縮小など、増収につながる項目も盛り込まれました。
ただし、その規模は減税全体を十分にカバーするものではありません。

また、人的控除の見直しや、自動車関係税制の再設計など、重要な論点は多くが先送りされています。
政治的な調整の難しさが、制度改革のスピードを鈍らせている面があります。

税制改正が「つぎはぎ」になる構造

税制改正が毎年のように「つぎはぎ」になる背景には、政治と財政の構造的な問題があります。

短期的な景気対策や家計支援は支持を得やすい一方で、負担増や制度整理は反発を招きやすいものです。
その結果、減税は先行し、財源や制度の整理は後回しになりがちです。

今回の税制改正も、そうした構造の延長線上にあります。


結論

2026年度税制改正は、家計や企業にとって一定のプラスとなる内容を含んでいます。
しかし、その裏側では、財源確保という重い課題が残されています。

減税を持続的な政策とするためには、負担のあり方や支出の見直しを避けて通ることはできません。
次回は、こうした財政問題とも深く関わる、都市と地方の税収格差というテーマを取り上げます。


参考

  • 日本経済新聞
    「税制改正、手取り増優先 年収の壁上げ」
    「全産業で設備投資減税 与党税制大綱決定」

という事で、今回は以上とさせていただきます。

次回以降も、よろしくお願いします。

次はこちら↓

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