2026年度税制改正 第6回(資産形成編)NISA・暗号資産課税はどう変わるのか― 投資優遇と規制の境界線

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2026年度税制改正では、家計支援や企業減税に加え、資産形成を巡る制度も大きく動きました。
象徴的なのが、NISAの利用対象拡大と、暗号資産課税の見直しです。

いずれも、投資を促す側面を持つ一方で、税制としての公平性や規律も強く意識されています。
本稿では、今回の改正が資産形成にどのような影響を与えるのか、その狙いと注意点を整理します。

18歳未満も対象となるNISAの拡充

今回の税制改正では、少額投資非課税制度であるNISAについて、18歳未満も利用できる仕組みが新たに設けられます。
対象となるのは、投資信託を定期的に積み立てる「つみたて投資枠」です。

年間の投資上限は60万円、非課税で保有できる総額は600万円とされ、2027年にも開始される見通しです。
早い段階から長期・積立投資に親しんでもらう狙いがあります。

若年層からの資産形成を後押しする制度設計であり、投資期間を長く取れる点は大きな特徴です。

家計支援との位置づけ

NISA拡充は、直接的な減税ではありません。
しかし、将来の資産形成を通じて、家計の安定につなげるという意味では、間接的な家計支援策と位置づけることができます。

一方で、投資に回せる余裕がある世帯に限られる側面もあります。
現時点で生活に余裕のない世帯にとっては、制度の恩恵を受けにくい点には留意が必要です。

暗号資産課税の大きな転換

今回の改正で、もう一つ注目されているのが暗号資産課税の見直しです。
2028年から、暗号資産取引で得た所得について、一律20%の分離課税を適用する方向が示されました。

内訳は、所得税15%、住民税5%です。
株式や投資信託と同様の扱いとすることで、税制上の整合性を図ります。

これまで暗号資産は総合課税の対象とされ、最高税率は55%に達する場合もありました。
税負担の重さが取引を抑制しているとの指摘があり、今回の見直しは市場活性化を意識したものといえます。

投資促進とリスク管理の両立

暗号資産課税を分離課税とすることで、投資環境は大きく変わります。
税率が明確になり、取引のハードルは下がります。

一方で、暗号資産は価格変動が大きく、投機性が高い資産です。
税制を緩和することで、過度なリスクテイクを助長しないかという懸念もあります。

税制面で株式と同じ扱いにすることが、実態に即しているのかは、今後も議論が続くでしょう。

投資優遇の一貫性はあるのか

NISAの拡充と暗号資産課税の見直しは、いずれも投資を後押しする方向です。
一方で、富裕層課税の強化や、ふるさと納税の上限設定といった措置も同時に進められています。

今回の税制改正は、投資を促進しつつ、行き過ぎた優遇は抑えるというバランスを意識した内容といえます。
資産形成支援と再分配の両立を図ろうとする姿勢が読み取れます。


結論

2026年度税制改正では、NISAの対象拡大と暗号資産課税の見直しにより、資産形成を巡る環境が大きく変わります。
長期・積立投資を促す一方で、税制としての整合性も重視した設計です。

ただし、制度が整ったからといって、誰にとっても資産形成が容易になるわけではありません。
投資のリスクや家計状況を踏まえた判断が、これまで以上に重要になります。

次回は、減税と支出拡大が進む中で、財政はどうなるのか、税制改正全体を財源の視点から考えます。


参考

  • 日本経済新聞
    「物価高・ゆがみ是正を意識 税制こう変わる」
    「税制改正、手取り増優先 年収の壁上げ」

という事で、今回は以上とさせていただきます。

次回以降も、よろしくお願いします。

次はこちら↓

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