医療費の増大と社会保険料負担の重さは、現役世代を中心に長年の課題となっています。その中で注目されてきたのが、市販薬と成分や効能が似ているいわゆる市販類似薬の扱いです。
政府・与党は2025年12月、市販類似薬の保険適用除外を見送る一方で、患者に追加負担を求める方針を示しました。完全な保険外しではなく、保険制度の枠内で負担を調整する判断です。この決定は、医療制度改革の現実的な落としどころを示すものともいえます。
市販類似薬とは何か
市販類似薬とは、花粉症薬や解熱鎮痛剤など、ドラッグストアで購入できる一般用医薬品と成分や効果が近い医療用医薬品を指します。医師の処方を受ければ保険適用となり、自己負担は原則1割から3割に抑えられています。
保険適用除外が見送られた背景
日本維新の会は、現役世代の社会保険料負担を軽減するため、市販類似薬を保険適用から除外することで年間約1兆円の医療費削減を目指していました。しかし、完全に保険適用を外すと、慢性疾患や継続的に服薬が必要な患者の負担が急増する懸念があります。
こうした点を踏まえ、政府・与党は保険適用を維持したまま、追加負担という形で調整する方針を選びました。
追加負担の仕組みと削減効果
政府試算では、花粉症薬や解熱鎮痛剤など約1000成分を対象に、薬剤費の4分の1を追加負担とすることで、医療給付費を約4100億円削減できるとされています。
これは、医療費抑制としては一定の効果がある一方、当初想定されていた大規模な削減には及ばない水準です。それでも、患者負担の急激な増加を避けつつ制度改革を進める現実的な対応といえます。
医療制度全体への影響
今回の判断は、市販類似薬に限らず、今後の医療制度改革の方向性を示しています。
完全な保険外しではなく、保険制度を維持しながら利用者に一定のコスト意識を求める手法は、他の医療サービスや給付見直しにも応用される可能性があります。医療の公平性と持続可能性のバランスをどう取るかが、引き続き問われることになります。
結論
市販類似薬の保険適用除外が見送られたことは、患者負担への配慮を優先した判断でした。一方で、追加負担の導入により、医療費抑制に向けた一歩が踏み出されたのも事実です。
医療費の増加と社会保険料負担の問題は、単純な二者択一では解決できません。今回の折衷案は、制度の持続性と国民負担のバランスを模索する過程にあることを示しています。今後、追加負担の具体的な対象や割合がどのように設計されるのかが、制度の評価を左右することになるでしょう。
参考
・日本経済新聞「市販類似薬、保険適用除外見送りへ」(2025年12月13日朝刊)
という事で、今回は以上とさせていただきます。
次回以降も、よろしくお願いします。

