<企業編①>全業種対象の投資減税 7%税額控除と即時償却は中小企業の追い風になるのか

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2026年度税制改正大綱では、家計向け減税が注目を集める一方で、企業向けにも新たな減税措置が盛り込まれています。その代表例が、全業種を対象とする大規模投資減税です。
一定の条件を満たせば、投資額の7%を法人税額から直接差し引くことができ、従来型の減価償却に代えて「即時償却」を選ぶことも可能になります。
本稿では、この新たな投資減税が中小企業にとってどのような意味を持つのかを整理します。

今回の投資減税の概要

今回の制度では、企業が行う設備投資について、規模や収益性といった条件を満たす場合に、投資額の7%を法人税額から控除できる仕組みが設けられます。税額控除を選ばない場合でも、投資額を初年度に一括して費用計上できる即時償却を選択できる点が特徴です。

税額控除は、利益が出ている企業ほど効果が大きく、即時償却は利益の平準化や赤字回避に使いやすいという違いがあります。企業の財務状況に応じて選択できる設計になっています。

全業種対象というメッセージ

今回の制度で注目すべき点は、「全業種」が対象とされていることです。これまでの政策減税は、特定の業種や成長分野に限定されることが多く、中小企業から見ると使いづらい制度も少なくありませんでした。
全業種対象としたことで、製造業だけでなく、建設業、物流、サービス業など幅広い業種が制度の射程に入ります。

これは、国内投資全体を底上げしたいという政策意図の表れといえます。

中小企業にとっての使いやすさ

一方で、中小企業にとって実際に使いやすい制度かどうかは、冷静に見極める必要があります。
投資額の規模要件や収益性の条件がどの程度厳しいのかによって、利用できる企業は大きく変わります。過去の類似制度では、「制度はあるが、使える企業は限られる」というケースも少なくありませんでした。

特に、中小企業の場合、投資を行う年に必ずしも十分な利益が出ているとは限りません。税額控除の恩恵を受けられない場合には、即時償却を選ぶことで、課税所得を抑えるという使い方が現実的になります。

設備投資判断への影響

この制度は、設備投資を「やるかやらないか」よりも、「いつやるか」の判断に影響を与える性格が強いと考えられます。
将来必要になる投資を前倒しすることで、税制上のメリットを確保できるのであれば、資金繰りと相談しながら前向きに検討する企業も増えるでしょう。

ただし、減税を目的に不要な投資を行うことは、本末転倒です。設備投資は本来、事業の生産性向上や競争力強化につながるものでなければなりません。

税理士・経営者の視点からの注意点

制度を活用する際には、税務だけでなく、資金繰りや将来の減価償却費の動きも含めて検討する必要があります。即時償却を選択した場合、翌期以降の費用が減るため、将来の税負担が増える可能性もあります。
短期的な節税と、中長期的な利益計画とのバランスが重要です。

また、制度は恒久的なものではなく、将来縮小や廃止される可能性もあります。政策減税に過度に依存しない経営姿勢が求められます。

結論

全業種対象の投資減税は、国内投資を促すという明確な政策メッセージを持っています。中小企業にとっても、条件次第では活用価値のある制度といえるでしょう。
ただし、減税ありきで投資判断を行うのではなく、自社の事業計画に合った投資かどうかを軸に考えることが重要です。税制はあくまで補助的な要素であり、経営判断そのものに代わるものではありません。

参考

日本経済新聞「家計・企業の減税ずらり 来年度税制大綱、与党詰め」(2025年12月13日)


という事で、今回は以上とさせていただきます。

次回以降も、よろしくお願いします。

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