「106万円の壁」撤廃は、一見するとパートや主婦層の働き方に関するテーマに見えます。
しかし、その背景には社会保障制度全体の持続可能性という大きな課題が横たわっています。
- 少子高齢化で年金・医療・介護の支出は増加
- 現役世代の社会保険料負担が重くなる一方
- 働き手を増やして支え手を広げる必要性
つまり「壁の撤廃」は、社会全体の基盤を守るための政策でもあるのです。
厚生年金の加入者拡大
壁が撤廃されることで、これまで扶養に入っていたパート層も厚生年金に加入するケースが増えます。
- 加入者が増えれば保険料収入が増加
- 将来の年金給付の基盤が強化
- 年金財政の持続性が高まる
短期的には企業・個人の負担が増えますが、長期的には**「支え手の拡大」**という効果が期待されます。
医療保険・介護保険への影響
厚生年金に加入するということは、健康保険・介護保険にも加入するということです。
- 保険料収入が増えることで制度財源が安定化
- 被扶養者として扱われていた配偶者が自ら加入者となる
- 医療や介護にかかる費用の公平な分担につながる
結果として、「働いている人」と「扶養に入っている人」の負担格差が縮小していきます。
扶養制度の見直しへの布石
今回の改正は、**「扶養控除のあり方」**にも直結します。
「扶養」という仕組みが、女性の働き方を制約してきたとの指摘は以前からありました。
- 税制上の扶養(配偶者控除など)
- 社会保険上の扶養(第3号被保険者制度など)
これらは一体的に議論されるべき課題です。
「106万円の壁」撤廃は、その見直しのスタートラインと言えるでしょう。
社会全体での影響と課題
壁の撤廃は前進である一方、課題も残ります。
- 短期的な手取り減少 → 家計の不満につながる恐れ
- 20時間の壁 → 就労調整が別の形で続く可能性
- 中小企業の負担増 → 雇用のあり方に影響
これらをどう乗り越えるかが、制度改革の次なる焦点となります。
まとめ
「106万円の壁」撤廃は、
- 働き方改革
- 雇用戦略
- 社会保障制度の持続性
このすべてに影響を与える大きな転換点です。
“壁をなくすこと”はゴールではなく、制度を持続させるための第一歩。
これからは「誰もが安心して働き、支え合う社会」をどう実現するかが問われます。
👉 次回は、社会保障制度改革の延長線上で議論されている 「退職金制度や年金制度の今後」 に焦点を当てたいと思います。
(参考 2025年9月6日付日経新聞朝刊)
という事で、今回は以上とさせていただきます。
次回以降も、よろしくお願いします。
