NISAつみたて投資枠に債券中心の投信が追加へ 長期投資の選択肢がどう変わるのか

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政府・与党が2026年度税制改正に向けて、NISAのつみたて投資枠で 債券中心の投資信託を新たに認める方向 で調整しています。
現行制度では株式比率が高い投資信託が中心でしたが、今回の見直しによりリスクを抑えた投資を志向する層にも選択肢が広がることになります。

また、18歳未満へのNISA解禁や、売却枠復活ルールの扱いなど、制度運用の論点も浮かび上がっています。
本稿では今回の改正案の背景と、個人投資家にとってどのような意味を持つのかを整理します。

1. 債券比率50%超の投信がつみたて投資枠に解禁へ

つみたて投資枠では、長期・積立・分散に適した投信であることが要件となっており、
原則として 株式比率が50%を超える 投信が中心でした。

今回の案では

  • 株式を一定割合含んでいれば、
  • 債券比率50%超の投資信託も対象に認める

という方向で調整されています。

これにより、

  • 株式の価格変動リスクを抑えたい層
  • 年齢が高く、より安定を重視する運用を望む層
  • 教育資金づくりなど、投資期間が比較的限定される目的

など、幅広いニーズに応える商品ラインナップが期待できます。

とくに足元では日米ともに金利が高止まりしており、債券利回りが魅力的になりつつあります。
「つみたて=株式中心」という構造が続いていた中で、資産配分の柔軟性が大きく広がる点は注目ポイントです。


2. 18歳未満へのつみたて投資枠拡大と教育資金づくり

今回の改正では、2027年開始に向けて 18歳未満にもつみたて投資枠を解禁 する方針が示されています。

主なポイントは次のとおりです。

  • 年間投資上限:60万円(18歳以上の半分)
  • 生涯投資上限:600万円
  • 子ども本人の同意を前提に 12歳から引き出し可能
  • 投資対象は18歳以上と同じ

目的は教育資金の形成を支援することですが、早期からの運用により複利効果を得やすい点も特徴です。
加えて、債券中心の投信が追加されれば、教育資金づくりに適したリスク抑制型の運用が選びやすくなるため、制度全体として整合性が取れてきます。


3. 売却後の非課税枠「即時復活」は見送りに

金融庁が要望していた「売却後の非課税枠をすぐに復活させる」制度改正は、今回は見送りとなりました。

現行制度では——

  • 非課税保有限度額に達している状態で
  • 資産を売却すると
  • 売却した分の枠は翌年にならないと復活しない

ため、投資先の入れ替え(リバランス)がしづらいという課題があります。

投資家からは改善を求める声が強い一方、政府・与党は
「利用実態を踏まえ継続検討」
という姿勢で、今回の大綱には盛り込まない方向となりました。

長期投資推進という制度の理念と、利用者の柔軟性をどう両立するかが、今後の焦点になります。


4. これからのつみたて投資枠はどう変わる?

今回の債券投信解禁によって、つみたて投資枠の性質が大きく変わる可能性があります。

  • リスクを抑えたい層は「株式×債券」の比率調整が容易に
  • 教育費など中期の目的別投資がしやすくなる
  • 高齢世代でもNISAを使った運用が選びやすくなる
  • 市場環境(金利上昇)を背景に、債券投信の需要が一段と高まる可能性

これまで「つみたて=株式メイン」という構造が固定されていたため、今回の拡大は制度設計上の重要な転換点といえます。


結論

NISAつみたて投資枠に債券中心の投資信託が追加されることで、長期資産形成の選択肢は大きく広がります。
「リスクを抑えたい」「教育資金を安定的に積み立てたい」といったニーズにも応えやすくなるため、制度がより多様な世代へと開かれていく流れが強まりそうです。

一方で、売却枠の即時復活は見送りとなり、投資の自由度という点では改善余地が残ります。
今後の税制改正でどこまで柔軟な制度運用が進むかが、NISAが“国民的制度”として成熟する上でのポイントとなります。


参考

  • 日本経済新聞「NISAつみたて投資枠、債券中心の投信追加へ」(2025年12月12日付)
  • 金融庁資料(NISA制度関連)

という事で、今回は以上とさせていただきます。

次回以降も、よろしくお願いします。

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