ふるさと納税の控除に上限導入へ 年収一億円超を対象にした改革のポイントと今後の行方

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ふるさと納税は開始から15年以上が経ち、今では寄付総額が1兆円を超える巨大制度へと成長しました。一方で、高所得者に大きな節税メリットが偏る現状や、都市部を中心とした税収流出の問題が指摘されてきました。政府・与党はこうした課題に対応するため、2026年度税制改正でふるさと納税の控除に新たな上限を設ける方向です。本稿では今回の改革案の概要と背景、そして制度全体に与える影響について整理します。

高所得者向け控除の上限設定

政府・与党が示した新たな案では、ふるさと納税に伴う住民税の控除額に上限を設けます。単身で給与収入のみというケースでは、年収が一億円を超えると控除に制限がかかります。具体的には、ふるさと納税向けの特例分について193万円を上限とし、所得税等を合わせた総控除額はおよそ438万円程度にとどまる見込みです。
寄付額そのものに制限は設けないため、寄付自体は自由ですが、返礼品を目的にした高額寄付に対しては控除効果が頭打ちになる設計です。

制度変更の背景にある問題意識

ふるさと納税では、寄付額に応じて自治体が返礼品を提供するのが一般的です。このため返礼品を目的とした寄付が増え、結果として高所得者ほど節税と返礼品の両方で大きなメリットを受けている点が課題視されてきました。
特に高所得者が多く住む都市部では、住民税の流出が深刻で、基礎的な行政サービスに必要な税収が目減りする状況も見られます。今回の上限導入は、こうした税収偏在を緩和し、制度の持続可能性を確保する狙いがあります。

募集費用の抑制と自治体の財源確保

改革案では控除の見直しに加えて、自治体が寄付の募集にかけるコストにもメスが入ります。仲介サイトやPRにかけられる費用の上限を、現行の最大5割から段階的に引き下げ、29年度からは最大4割とする方針です。
一方、返礼品の調達費は寄付額の3割までとする現行ルールを継続します。自治体に残る財源を増やし、本来の地域活性化に資する運用を促す意図があります。

法令違反への対応強化

指定制度の厳格化も図られます。自治体がルールに違反した場合、ふるさと納税の対象から外される期間を現在の一律2年から最大3年へと拡大し、状況に応じて柔軟に設定できるようになります。また、違反行為の遡及期間を2年から5年に延ばし、制度の適正運用を強化します。
返礼品競争の過熱を防ぎつつ、公平性と透明性を担保するための措置です。

拡大し続けるふるさと納税市場

ふるさと納税は輸送コストの低さやEC化の流れも追い風に、返礼品競争が激化し、2024年度の寄付総額は1.2兆円と過去最高を更新しています。制度開始当初の理念である地域間の支え合いや地方創生といった目的よりも、返礼品の魅力が寄付を大きく左右する状況になりつつあります。
今回の改革はこのゆがみを是正し、より本来の目的に沿った制度へと軌道修正するための一歩といえます。

結論

ふるさと納税の控除上限の導入は、高所得者に偏っていたメリットの見直しと、自治体間の税収格差の是正を目的とするものです。加えて募集費用の抑制や法令順守の強化など、制度全体の透明性と持続可能性を高めるための施策が同時に進められようとしています。
寄付者側としては、従来のような返礼品中心の寄付行動が見直され、寄付本来の意義や地域支援の視点が重要になっていきそうです。自治体にとっても、返礼品の競争力だけに頼らない地域の魅力づくりが今後いっそう求められます。制度が成熟期に入る中で、より公正で安定的な仕組みへと向かう転機となる可能性があります。

参考

日本経済新聞「ふるさと納税、年収1億円以上に控除制限」2025年12月11日朝刊


という事で、今回は以上とさせていただきます。

次回以降も、よろしくお願いします。

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