住宅ローン減税の改正案では、中古住宅の限度額が大幅に引き上げられ、適用期間も13年間へと統一される方向が示されています。制度の見直しは、単なる税制変更にとどまらず、住宅価格の動向や市場構造にも影響を与えます。住宅価格の高騰が続く中、既存住宅市場への関心が高まっている背景も踏まえ、今回の改正案がどのような意味を持つのかを整理していきます。
1 住宅価格の高騰が政策転換を促している
新築マンション・新築戸建ての価格は各地で上昇が続いています。建築資材の高騰、人件費の上昇、土地取得の難しさなどが重なり、平均価格は全国的に上向きです。
とくに2024〜2025年にかけては、
- 新築マンションの「年収倍率」が10倍超の自治体が増加
- 地方都市でも7000万円〜1億円台の物件が散見
といった状況が続き、一般の購入層が新築に手を出しにくくなっています。
こうした市場環境に対応するため、政府は「中古住宅へのシフト」を政策的に後押しする方向へと舵を切っています。今回の住宅ローン減税の改正案は、その流れを象徴するものです。
2 中古住宅の限度額引き上げが意味すること
今回の案では、中古住宅のローン限度額が大きく引き上げられ、最大4500万円まで対象となるケースが生まれます。
これにより、
- 新築価格が高すぎて手が届きにくい層
- より立地条件を優先したい層
- リノベーションを前提に魅力ある中古物件を選びたい層
といった多様なニーズに応える制度になります。
現行制度では「減税の有利さ」と「住宅の選択」が一致しておらず、結果として新築偏重の市場が続いていました。限度額を引き上げることで、中古住宅を選んでも減税が不利にならず、自然に選択肢が広がります。
政策側の狙いは、
新築価格高騰→中古市場の活用→住宅ストックの循環型社会へ
という流れをつくる点にあります。
3 既存住宅市場の動向:ニーズは確実に増えている
実際に既存住宅市場は着実に拡大しています。背景には次のような要素があります。
(1)都市部での中古人気の高まり
駅近や利便性の高い物件は、新築ではほとんど供給されません。中古住宅の方が「立地の質」が高いケースが多く、若年層・子育て世帯の選択肢として注目されています。
(2)リノベーション市場の成長
フルリノベーションによって「新築同等の快適さ」を再現できるサービスが普及し、施工品質も向上しています。住宅の価値を「建物そのもの」ではなく「暮らしやすさ」で測る流れが定着しつつあります。
(3)空き家・既存ストックの活用政策
全国に急増する空き家問題への対応として、国は既存住宅の流通を重視しています。住宅ローン減税の拡充は、空き家活用や市場流通促進と整合性のある施策です。
4 中古住宅の価格にも影響が出る可能性
限度額が引き上げられ、中古住宅に優遇が広がることで、市場価格にも次のような動きが出る可能性があります。
- 人気エリアの中古物件の価格が底堅くなる
- リノベーション済み物件の価格水準が上昇する
- 性能証明書付きの住宅が評価されやすくなる
とくに性能向上リノベーションを施した物件では、限度額3500万円・4500万円の枠が魅力となり、取引価格の上昇圧力になる場面も想定されます。
一方で、市場が中古にシフトすることで新築価格の上昇がやや落ち着く可能性もあります。住宅ローン減税の改正は、市場の需給バランスにも間接的な影響を与えます。
5 購入者が注意すべきポイント
中古住宅の支援が拡大するといっても、どの物件でも減税が最大限使えるわけではありません。注意点も押さえておく必要があります。
- 性能に応じて限度額が変わる(省エネ・耐震の確認が重要)
- 築年数によって書類が必要となる場合が多い
- 物件価格そのものが上がる可能性がある
- リノベ前提の場合、予算の見通しを慎重に立てる必要がある
制度拡充に喜ぶだけでなく、手続き・証明書・価格の動きにも目を向けることが重要です。
結論
新築住宅の価格高騰が続く中、今回の住宅ローン減税の改正案は中古住宅へのシフトを強く後押しする内容となっています。限度額の引き上げや適用期間の延長によって、中古物件を選ぶ際の減税メリットは大きくなり、市場の選択肢が広がります。
今後は、立地重視の層やリノベーション志向の層が中古市場に一段と流れ込み、価格形成にも変化が生まれる可能性があります。住宅の「新築/中古」という区分ではなく、「ライフスタイルに合う住まいをどう選ぶか」という視点がいっそう重要になる局面です。
参考
・日本経済新聞「住宅ローン減税の対象 中古、最大4500万円に上げ」(2025年12月10日)
・各種住宅市場統計(住宅価格指数・中古流通動向 ほか)
という事で、今回は以上とさせていただきます。
次回以降も、よろしくお願いします。
