住宅価格の高騰が続くなか、政府・与党は住宅ローン減税の見直しに踏み切る方向です。今回示された改正案では、中古住宅の支援を大幅に強化し、限度額の引き上げや適用期間の延長が検討されています。住宅取得の選択肢が広がる一方で、制度の全体像を正確に理解しておくことが重要です。本稿では、新たに示された改正案の内容を整理し、これから住まいを検討する人にとってのポイントを解説します。
1 制度そのものが5年間延長へ
現在の住宅ローン減税は2025年末に期限を迎える予定でしたが、今回の案では制度自体を 2030年末まで延長 する方向で調整されています。税制改正の大枠としては、しばらくの間、住宅ローン減税を前提に資金計画を立てられる状態が続くことになります。
制度がなくなる不安が消えることで、若年層や子育て世帯が住宅の取得時期を検討しやすくなります。
2 中古住宅への支援が大幅に拡充
改正案の最大の特徴は 中古住宅の支援強化 です。背景には、新築価格の高騰と、中古住宅の流通を促進したい政策目的があります。
主な変更点は次のとおりです。
(1)ローン限度額の大幅引き上げ
現行制度では、中古住宅の住宅ローン減税の対象となる借入限度額は 最大3000万円 でした。
改正案ではこれを 3500万円 に引き上げます。
さらに、以下の場合はより手厚い支援を受けられます。
- 子育て世帯などの優遇対象者:最大4500万円
- 環境性能の高い中古住宅:最大3500万円
つまり、中古住宅の中でも性能や属性に応じて段階的に限度額が拡大される仕組みに変わります。
(2)新築と中古の差が小さくなる
これまでの制度では、新築住宅が優遇される傾向がありました。しかし今回の改正案では、限度額の差が縮まり、「新築を買わないと減税が不利」という状況は改善されます。
中古住宅の選択肢が広がることで、地域の中古流通市場にも影響が出てくる可能性があります。
3 適用期間は10年から13年へ延長
現行制度では、住宅ローン減税の適用期間は原則10年間ですが、環境性能の高い新築住宅については13年間となっています。
改正案では、
中古・新築どちらも13年間の統一
となる方向で検討されています。
減税期間が3年延びるということは、控除額の積み上がりが増えることを意味します。長期の住宅ローンを組む世帯にとっては影響が大きく、資金計画の見直しが必要になる場合があります。
4 子育て世帯への優遇の明確化
今回の改正案では、子育て世帯が中古住宅を取得する際の限度額が 最大4500万円 に設定されます。新築だけでなく、中古取得でもしっかり優遇を受けられることが明確になった点は、新しい特徴です。
国として「既存住宅の活用」と「子育て支援」を同時に進める意図がはっきり出ています。
5 今後の検討ポイント
制度の方向性は示されましたが、最終的な数値や条件は年末の税制改正大綱で確定されます。今後注目したい点は次のとおりです。
- 省エネ性能などの判定基準の具体化
- 子育て世帯の範囲(年齢・人数など)がどう定義されるか
- 中古住宅での性能確認の手続きがどこまで簡素化されるか
- 控除率(現行は年末ローン残高の0.7%)が維持されるか
これらの要素は、最終的にどれだけ減税メリットを受けられるかに直結します。
結論
今回示された住宅ローン減税の改正案は、中古住宅への支援を大幅に強化し、新築との扱いの差を縮める内容となっています。限度額の引き上げや適用期間の延長は、住宅取得を検討する多くの世帯にとってプラスに働く可能性があります。
一方で、制度の詳細が確定するのは税制改正大綱の発表以降です。今後の検討状況を踏まえながら、資金計画や購入時期を柔軟に考えていくことが大切です。中古市場の活性化が進めば、より多様な住まいの選択肢が広がっていくことも期待されます。
参考
・日本経済新聞「住宅ローン減税の対象 中古、最大4500万円に上げ」(2025年12月10日)
という事で、今回は以上とさせていただきます。
次回以降も、よろしくお願いします。

