大型資金調達は海外へ向かうのか 日本企業の外債発行が最高額となった背景

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2025年、日本企業が海外で発行する外貨建て債券(外債)が過去最高を更新しました。1〜11月の発行額は25兆円に達し、前年の通年記録を早々に上回っています。企業が大規模なM&Aや成長投資を進めるなかで、国内ではまかなえない巨額資金をどこから調達するのかという課題が鮮明になってきました。金利環境の変化も影響し、日本企業の資金調達が海外へシフトする構造が強まっています。本稿では、この動きの背景と日本企業の財務戦略の変化について整理します。

国内社債市場の限界が表面化

外債発行が増えた背景には、国内市場の規模の小ささがあります。日本の社債市場は米国の10分の1以下であり、数兆円規模の調達を必要とする企業にとっては投資家層の厚みが不十分です。大規模投資や買収資金を必要とする企業にとって、海外市場での資金調達は必然になりつつあります。

2025年に象徴的な事例となったのが、NTTの親子上場解消に伴う巨額資金の調達です。NTTファイナンスが発行した外債の総額は約2兆6000億円と過去最大規模となりました。国内市場だけでは吸収しきれない調達ニーズが明確に表れた形といえます。

金利差縮小で外債の割高感が後退

資金が海外へ向かう背景には、日米欧の金利環境の変化があります。日銀の利上げにより国内金利は上昇した一方、米国や欧州では金融緩和方向の観測も強まり、海外金利は低下傾向にあります。その結果、従来のように外債が割高になる構図が薄れ、発行コスト面で海外調達が選択肢として優位になりつつあります。

具体的には、日本の10年債利回りは24年末比で0.9%前後上昇したのに対し、米国は0.4%程度低下しました。こうした金利差の縮小が、企業の海外調達を後押しする要因になっています。

海外投資家の厚みが成長投資を支える

外債市場には多様な投資家が存在し、企業の信用力や事業戦略次第では、複数通貨建て・複数年限で柔軟に資金調達が可能です。投資家層の厚さは、変動する金利環境のなかでも安定的な資金調達を可能にします。また、企業にとっては海外投資家と継続的な接点を持つことが、財務戦略上の一つのアセットとなります。

とりわけ、AI関連投資や海外事業展開など長期成長を前提としたプロジェクトでは、年限の長い債券を大きな規模で発行できる海外市場の存在が重要になっています。

日本企業の財務戦略はどう変わるか

外債発行の増加は、一時的な金利差の問題だけではなく、日本企業全体が大型投資に向けて財務基盤を再構築しつつあることの表れだといえます。国内市場に依存していては実現できない規模の調達を、成長戦略のために積極的に海外へ求める動きが今後も続く可能性があります。

また、国内市場の投資家にとっても、海外シフトが進むことで「日本企業の債券を海外投資家と競う」構図が強まります。企業と投資家の関係性も、よりグローバルな文脈で再構築されていくでしょう。


結論

日本企業による外債発行が過去最高を更新した背景には、国内市場の規模の限界、成長投資の需要拡大、そして金利差縮小という複数の要因が重なっています。今後の経済・金融環境によって変動はあるものの、企業が大型投資を進める限り、海外市場を活用した資金調達は一段と重要度を増していくはずです。日本企業の財務戦略がグローバル市場と一体化し、国内外の投資家との関係性が再定義される局面に入っています。


参考

・日本経済新聞「大型資金調達、海外シフト 日本企業の外債発行最高、25兆円」2025年12月9日


という事で、今回は以上とさせていただきます。

次回以降も、よろしくお願いします。

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