金・銀に投資マネーが流入する背景 AI株からの資金シフトと利下げ観測が動かす市場構造

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2025年後半、金(ゴールド)や銀(シルバー)といった貴金属が再び強い注目を集めています。10月以降いったん調整が入ったものの、年末にかけて価格は急反発し、銀は過去最高値を更新。金も国内外で最高値を塗り替える動きを見せています。

背景には、米国の金融政策をめぐる不確実性やFRB議長人事への思惑、そしてAI株の上昇一服が重なっています。資金が株式からコモディティへ移動する「セクターローテーション」が進み、投資家の意識が変化している点も重要です。

今回の記事では、こうした金・銀へのマネー流入の背景、今後の焦点、そして投資を検討する際の視点を整理します。

1. 銀価格の急伸と“悪魔の金属”の特徴

銀の国際指標価格は11月末に急伸し、年初から2倍以上。価格変動が大きいため欧米市場で「悪魔の金属」と呼ばれることもあります。10月の最高値更新時にはロンドン市場で現物不足が発生し、供給不安が価格を押し上げました。

その後、需給のひっ迫は緩和したものの、根本的な供給増には至っていません。銀は太陽光パネルやEVなど脱炭素関連の産業需要も強いため、価格上昇時のボラティリティが高く、「価格の目線が一段切り上がった」との見方が広がっています。

一部の専門家は2026年に70ドル台、条件次第では100ドルも視野に入る可能性を指摘しており、銀市場には強気の見方が続いています。


2. 金価格の上昇と“安全資産”としての位置づけ

銀の急伸に連動するかたちで、金も上昇基調を強めています。国内では田中貴金属の小売価格が1グラム2万3000円台に到達し最高値を更新しました。

金は「無国籍資産」であり、通貨や国家リスクから独立して評価される特性があります。株式市場が過熱した局面や、景気後退リスクが高まった局面では資金の受け皿となるケースが多く、今回もその典型例といえます。


3. 金・銀に資金が入る“3つの理由”

(1)FRB議長人事を巡る不透明感

ブルームバーグが報じた次期FRB議長候補に関する観測が、投資家心理を揺さぶっています。候補者の中に「政権寄り」とされる人物が含まれており、中央銀行の独立性に疑問が生じたことで、米ドル建て資産からの資金逃避が発生しました。

金・銀のような国家に依存しない資産は、こうした局面で買いが入りやすくなります。

(2)利下げ観測の高まり

市場では「年内のFOMCで利下げがある」との見方が強まり、織り込みは9割近くに達しました。

金利が下がると、利息を生まない金・銀の機会損失が減り、相対的な魅力が高まります。特に2023〜2024年の米国の急激な金利上昇で金は買われにくい時期が続きましたが、その反動が一気に表面化していると考えられます。

(3)AI株からの資金シフト(セクターローテーション)

2023年から続いたAI関連株の強烈な上昇は次第に一服しており、投資資金が“利確の出口”を探し始めています。
ヘッジファンドなどの投機筋の一部では、AI株を売って得た資金を銀や金に移す動きがみられています。

実際、2025年の値動きを比較すると、

  • AI株…高値警戒感から上昇が鈍化
  • 金・銀…再び上昇基調に復帰

という「二極化」が進んでいます。


4. 米国債の“受け皿”としての役割の変化

従来、主力株を売った際の資金の行き先は米国債でした。しかし現在の米国には、

  • 財政赤字の拡大
  • トランプ政権の金融政策への影響力
  • インフレ再燃リスク

といった懸念材料が重なり、「米国債が安全資産とは限らない」という認識が広がっています。

その結果、資金の避難先として金が以前より強調されるようになってきました。


5. 今後の焦点――銀主導の相場は続くか

今回の特徴は“銀主導”の上昇である点です。金と比べて値動きが軽く、少量の資金でも価格が動きやすいことから、短期の投機資金が集中しやすい面があります。

太陽光パネルやEV関連の需要が底堅い以上、中長期的には銀に対する投資関心は続く可能性があります。

一方で、銀は価格の振れ幅が大きいため、投資する際は「短期の急落リスク」を前提としたポートフォリオ設計が欠かせません。


■結論

2025年末にかけて金・銀が力強い動きを見せている背景には、

  1. FRB議長人事を巡る不透明感
  2. 利下げ観測の高まり
  3. AI株からの資金シフト
  4. 米国債のリスク認識の変化

といった複数の要因が重なっています。

特に、AI株などの主力銘柄が上昇一服となる中で、投資家が資金を移動させる「セクターローテーション」が進んでおり、金・銀がその受け皿になっている点は投資戦略上も重要です。

金はリスクヘッジ、銀はボラティリティを含む成長資産という性格の違いがあります。両者の特徴を理解したうえで、投資ポートフォリオの一部として検討する余地が広がっています。


■参考

日本経済新聞「金・銀に投資マネー流入」(2025年12月4日)


という事で、今回は以上とさせていただきます。

次回以降も、よろしくお願いします。

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