【第7回】ステーキング・NFTはどう課税されるのか 分離課税時代に向けた“複雑領域”の整理と実務ポイント

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仮想通貨の20%分離課税が検討される中で、個人投資家がもっとも不安を感じている分野の一つが「ステーキング」と「NFT」の課税です。これらは売買だけでなく、報酬、交換、移転など多様な取引形態があり、税務の判断が難しい領域とされています。

分離課税化によって税率は20%に統一される見通しですが、課税タイミングや所得区分の扱いは制度設計に左右されるため、理解と準備が欠かせません。本稿では、制度改正前後を見据えて、ステーキングとNFTの税務上の本質と実務ポイントを整理します。

1.ステーキングの課税はなぜ複雑なのか

ステーキングとは、保有するトークンをネットワークに預け、その対価として報酬を受け取る仕組みです。現行制度では、受け取った瞬間に「雑所得」として所得が発生するとされていますが、取引所や方式により以下が複雑化します。

  • 報酬トークンが価格変動しやすい
  • 受取回数が多く記録が煩雑
  • 報酬をすぐ売却するか、保有し続けるかで課税タイミングが変わる
  • 海外DeFiでは報酬が複数トークンに分かれるケースもある

特に報酬を受け取った段階で課税される方式は、キャッシュフロー上の負担を生み、投資家から改善が求められてきました。

2.分離課税後に想定される3つの方向性

ステーキングの課税方式は、次のいずれかに整理される可能性があります。

A:報酬受取時に課税(現行踏襲)

報酬が付与された時点で所得が発生し、売却したかどうかに関係なく課税される方式です。
メリット:透明性が高い
デメリット:キャッシュフロー上の負担が大きい

B:売却時課税(最も投資家に有利)

海外DeFiも含め、報酬を受け取った段階では課税されず、売却時に課税する方式です。
メリット:株式配当や利子に近く、わかりやすい
デメリット:仕組み上の整理が必要で制度設計が複雑

C:種類ごとに課税方法を整理する

国内取引所のステーキングは受取時課税、DeFiは売却時課税など、区分整理する方式です。

分離課税になる以上、税務の整合性を取るため、シンプルな売却時課税を望む声は強まっています。


3.NFTの課税:購入時・売却時・交換時の考え方

NFTは仮想通貨よりもさらに課税が複雑です。取引の種類ごとに課税タイミングを整理します。

(1)NFTを購入したとき

仮想通貨を用いてNFTを買う場合、
仮想通貨を使った時点で「交換」とみなされ課税」が生じます。

例:ETH → NFT

  • NFTの購入価額がETHの売却価額となる
  • ETHの取得費との差額が課税所得

NFT自体にはこの段階では課税されません。

(2)NFTを売却したとき

NFTを売却した金額 − NFTの取得価額 が課税所得になります。

  • ETHで売る場合:ETHの評価額で課税
  • 円で売る場合:その時点の売却額で課税

NFTの評価額は市場が薄い場合があり、実務的な取得価額の記録が極めて重要になります。

(3)NFTを交換したとき

NFT ⇔ NFT の交換は、双方のNFTの時価で課税される可能性があります。
この領域は制度整備が不十分なため、分離課税化に合わせた明確化が期待されています。

(4)NFTを“受け取った”とき

エアドロップやゲーム内報酬でNFTを受け取った場合、受取時の時価で課税される可能性があります。
価値が変動しやすく、評価額の計算が難しいため、税務リスクの高い領域といえます。


4.ステーキング・NFTの税務実務で最重要となるポイント

ステーキング・NFTは価格変動が激しく、取引履歴も複雑なため、実務面では次の対応が欠かせません。

① 取引履歴の保存

  • 報酬付与の日時
  • NFT購入と売却の記録
  • 海外DeFiでのトランザクションID
  • 取得価額の保存(スクリーンショット推奨)

とくにNFTは市場が薄く、価格算定が難しいため、取得価額の保存が必須です。

② 取引所を分散しすぎない

取引所が増えるほど実務負担が爆増します。
国内大手+必要最小限の海外という構成が最も実務負担が少なくなります。

③ 税務ソフトとの連携

ステーキングやNFTにも対応したソフトを利用することで、計算ミスを大幅に減らせます。

④ 売却時課税が採用される可能性に備える

制度が変わると税務の前提も変わるため、

  • 報酬受取
  • 売却
  • 交換

などの記録を細かく残すことが重要になります。


5.分離課税とステーキング・NFTの関係

分離課税は“投資家保護・市場拡大”を目的としています。
そのため、ステーキングやNFTのように複雑な領域は、制度設計の重点項目になる可能性が高いです。

具体的には、

  • ステーキング報酬の課税方法の統一
  • NFTの取得価額ルールの整備
  • 海外取引の管理ルールの標準化
  • 交換時課税の整理

などが期待されています。

こうした制度整備により、投資家の税務上の負担が軽減し、健全な市場形成につながると考えられます。


結論

ステーキングやNFTは、仮想通貨の中でも特に税務が複雑な領域です。分離課税化によって税率は20%に統一されますが、課税タイミングや所得区分の整理が必要な点は変わりません。

制度変更を迎える前に、

  • 報酬の記録
  • 取得価額の保存
  • 取引所の整理
  • 管理ツールの導入
  • 税務ルールの理解

といった準備を進めることで、税務リスクを抑えながら資産形成を進めることができます。

ステーキング・NFTは大きな成長余力を持つ一方で、税務の計算を誤ると過大な負担やトラブルにつながるため、制度の動向を注視しつつ、慎重に取り組むことが重要です。


出典

・金融庁「暗号資産に関する制度整備」
・税制改正に関する報道資料
・国内外のステーキング・NFTの税務実務情報


という事で、今回は以上とさせていただきます。

次回以降も、よろしくお願いします。

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