高市早苗政権が掲げる「責任ある積極財政」は、先端技術への投資や安全保障強化といった成長戦略を柱に据えています。政策の実行に向け、党内の積極財政派議員と連携し、政府会議にも同じ思想を持つ有識者を起用する動きが目立ちます。
この体制は、かつて安倍政権が採用した「別動隊」と称される政策実行体制を想起させます。高市政権はどのように経済運営を進めようとしているのでしょうか。アベノミクスとの連続性と相違点を整理しながら、今後の焦点を探ります。
積極財政路線を支える党内ネットワーク
高市政権は、自民党内の「責任ある積極財政を推進する議員連盟」と連携しています。
この議連は比較的若い議員を中心に構成され、かつて安倍晋三元首相が後見人として支えたグループです。
議連では、食料品中心の消費税減税や予算編成での機動的な財政出動を提言してきました。また、プライマリーバランス黒字化目標の硬直性を批判し、成長と財政の両立を図る位置づけです。
今回、高市政権は議連メンバーを閣僚や官房副長官に起用し、「政策実行部隊」として組織的に政策を推進する構えを見せています。
経済学者ネットワークと政策ブレーン
高市政権のもう一つの特徴は、積極財政・金融緩和を主張する著名エコノミストを民間議員として政策決定の場に迎え入れている点です。
- 元日銀副総裁や著名エコノミストを経済財政諮問会議に起用
- 「日本成長戦略会議」には金融緩和派の論客を招へい
- 安倍政権で理論面を支えた経済ブレーンも引き続き関与
これにより、金融緩和×財政出動=成長創出 というフレームが政策議論の中心に据えられる可能性が高まっています。
安倍政権もノーベル賞経済学者を会議に招いてアベノミクスを正当化しましたが、その手法を明確に踏襲していると言えます。
アベノミクスの継承と政治環境の違い
高市政権の戦略は、安倍政権の強力な「政策運営モデル」を継承しています。
| 観点 | 安倍政権 | 高市政権 |
|---|---|---|
| 経済哲学 | 積極財政+金融緩和 | 積極財政+供給力強化 |
| 支援基盤 | 最大派閥「安倍派」 | 少数与党・議連中心 |
| 戦略 | 別動隊の結成、理論武装 | 同様のモデルを踏襲 |
| 課題 | デフレ脱却、円安耐性 | インフレ下の財政運営、債務水準 |
違いは政治環境と財政制約です。
安倍政権は「数の力」で政策を押し通せましたが、現在は少数与党体制であり、野党との調整が不可欠です。加えて、国債発行残高の規模はさらに大きくなり、国際的な金利動向も不確実性を増しています。
財政再建とのバランス
高市首相は積極財政を掲げる一方で、債務対GDP比の安定的な引き下げにも触れています。
単なる「財政拡大」「ばらまき」ではなく、成長投資を通じた財政健全化を狙う点が特徴です。
とはいえ、インフレ環境下での財政拡張は、金利上昇や通貨安を助長し、国債費の膨張リスクにもつながります。政策効果が十分に現れなければ、財政運営の柔軟性が損なわれる懸念もあります。
今後の焦点:政策効果と政治基盤
高市政権が描くモデルは、財政出動と供給力強化による成長加速です。
特に以下の分野が優先投資領域となる見通しです。
- 先端技術・AI・量子分野
- サイバー安全保障・防衛投資
- 地方創生・DX推進
ただし、成長戦略の成果が早期に表れなければ、財政リスクが表面化し、路線の転換圧力が強まる可能性もあります。
結論
高市政権は、アベノミクスの「積極財政と政策ブレーン活用」という手法を明確に踏襲しつつ、供給力強化と成長投資を前面に掲げています。少数与党という制約の中で、議連やブレーンネットワークを駆使して政策を実行しようとする体制は、現代版アベノミクスの進化系といえるでしょう。
今後は、
- 予算配分の重点化
- 財源確保策
- 政治的合意形成の能力
が試されます。日本経済の持続的成長と財政健全化の両立が実現できるか、正念場を迎えています。
出典
- 日本経済新聞「自民に『積極財政派』別動隊」
- 日本経済新聞「アベノミクスの手法踏襲」
という事で、今回は以上とさせていただきます。
次回以降も、よろしくお願いします。

