第1回では、MMF(マネー・マーケット・ファンド)が「預金と投資の間にある商品」であり、2016年にマイナス金利政策の影響で姿を消したことをお話ししました。
では、なぜ2026年にもMMFが復活するのでしょうか?
そこには、日本経済が大きな転換点を迎えているという背景があります。
1. マイナス金利政策とは何だったのか
2016年、日銀は「マイナス金利政策」を導入しました。
銀行が日銀に預けるお金に「マイナス金利」をかけることで、金融機関に貸し出しを促し、企業や個人の投資や消費を後押しする狙いがありました。
しかしその副作用は大きく、
- 国債の利回りが大きく低下
- 銀行預金の金利もほぼゼロに
- MMFのような短期運用型商品が成立しなくなる
こうして、MMFは販売を停止せざるを得なかったのです。
2. 2024年のマイナス金利解除
転機が訪れたのは2024年。日銀はついにマイナス金利を解除し、政策金利を 0.5% へと引き上げました。
これに伴い、10年国債の利回りは 1.6%台 と約17年ぶりの高水準を記録しました。
これは、金融機関にとっても個人にとっても「金利でお金を増やせる世界」が戻ってきたことを意味します。
3. インフレへのシフト
背景には、日本経済全体の流れがあります。
長く続いたデフレから、ようやくインフレへと移行しつつあるのです。
- 消費者物価指数(CPI)の伸び率は 約3%
- 日銀の物価目標である2%を上回る水準
- 2025年の春季労使交渉(春闘)では 34年ぶりの高い賃上げ率
「物価が上がり、賃金も上がる」――これまで日本でなかなか実現しなかった構図が少しずつ定着し始めています。
4. 金利上昇がもたらすMMFの復活
金利が上がると、国債や短期社債といった「安全資産」にも利回りがつきます。
その結果、MMFのような商品も再び成立するのです。
現在の普通預金金利は平均で 約0.2%。
一方で、復活後のMMFは 0.5%前後 が期待されると言われています。
つまり、銀行に預けるよりも2倍以上の利回り が見込めるというわけです。
5. 個人マネーの動き
金利上昇により、すでに個人投資家の動きにも変化が出ています。
- 個人向け国債の購入が増加
- 社債への関心が高まる
- 預金から「少しでも有利な商品」へ資金を動かす傾向
MMFは、まさにこうした個人マネーの受け皿として復活します。
6. 日本経済にとっての意味
MMFの復活は、単なる金融商品の再登場以上の意味を持ちます。
それは、「日本経済が長年のデフレから脱却しつつあることを象徴する出来事」だからです。
- 金利ゼロの世界では消えた商品が
- 金利ある世界の復活とともに戻ってくる
これは、私たちの生活や資産形成にも直接つながってきます。
まとめ
MMFが復活する理由はシンプルです。
- 金利が上がったから
- 経済がデフレからインフレへ移行したから
つまり、日本の金融環境が大きく変わったことの証なのです。
次回の第3回では、さらに一歩進んで、ブロックチェーン技術を使った「デジタルMMF」の可能性について解説します。これまでのMMFとはまったく違う、新しい運用スタイルが見えてきます。
📌 参考:
国内MMF、9年ぶり復活(日本経済新聞 2025年10月2日)
https://www.nikkei.com/article/DGKKZO91675410S5A001C2MM8000/
という事で、今回は以上とさせていただきます。
次回以降も、よろしくお願いします。
