インボイス制度の特例措置は、2026年10月を境に大きな節目を迎えます。
免税事業者からの仕入れに対する仕入税額控除は、8割から7割へ引き下げられ、以降は段階的に縮小していく見通しです。
この変更は、ある日突然起きるものではありません。
にもかかわらず、実務対応を直前まで先送りすると、価格交渉・契約見直し・経理処理が同時多発的に発生し、現場が混乱しがちです。
以下では、2026年10月を起点に逆算しながら、いつ・何を確認しておくべきかを時系列で整理します。
2025年中にやっておくべきこと
まず2025年中は、「影響の見える化」が最優先です。
- 免税事業者との取引先一覧の作成
- 年間仕入額・取引頻度の把握
- 免税事業者分の仕入税額控除が減少した場合の影響額試算
この段階では、判断を下す必要はありません。
重要なのは、「どこが、どれくらい影響を受けるのか」を数字で把握することです。
同時に、
- 取引先がインボイス登録を予定しているか
- 登録時期の見込み
といった情報も、可能な範囲で収集しておくと、その後の判断が楽になります。
2026年前半に検討すべき論点
2026年に入ったら、影響把握から一歩進み、「対応方針」を検討します。
- 免税事業者との取引を継続するか
- 価格条件を見直す必要があるか
- 課税事業者への切り替えを前提とする取引はあるか
この段階で、
- 7割控除の場合
- 将来的に5割まで下がった場合
の複数パターンを想定しておくと、短期判断に振り回されにくくなります。
経理部門だけで抱え込まず、経営者や営業部門と共有することが重要です。
2026年夏までに進めておくべき実務調整
2026年夏頃までには、方向性をある程度固めておく必要があります。
- 取引条件変更が必要な先との事前協議
- 契約書・覚書の修正検討
- 請求書様式・処理フローの確認
特に注意したいのは、「制度変更の説明を後回しにしない」ことです。
控除率引き下げは制度上の事実であり、交渉材料としても説明しやすいテーマです。
2026年9月までに最終確認すること
制度切替直前の段階では、実務面の最終チェックを行います。
- 免税事業者・課税事業者の区分管理は正確か
- 2026年10月以降の取引に適用する控除率を誤らない体制になっているか
- 経理システム・チェックリストは更新されているか
この段階でのミスは、申告時の修正や税務調査リスクにつながります。
「分かっていたはず」の取りこぼしが出やすい時期でもあります。
2026年10月以降に起こり得る実務上の変化
2026年10月以降は、控除率7割での実務が始まります。
- 消費税負担増を実感する取引先が出てくる
- 免税事業者側から登録相談を受けるケースが増える
- 価格交渉が再燃する可能性
この時期は、「一度決めた方針を固定化しすぎない」ことが大切です。
段階的な制度変更である以上、実務も微調整を前提に運用する必要があります。
2031年を見据えた中長期の視点
特例は2031年9月で終了予定です。
2026年10月はゴールではなく、通過点に過ぎません。
- 免税事業者との取引構造をどうするか
- 課税事業者を前提とした価格体系へ移行するか
- 事業モデルそのものを見直す必要はないか
2026年時点で「しのぐ」対応と、2031年を見据えた「構造対応」を分けて考えることが重要です。
結論
2026年10月のインボイス特例見直しは、突然の制度変更ではありません。
むしろ、数年かけて進む制度調整の中間地点です。
だからこそ、
- 早めに影響を把握し
- 段階的に判断し
- 実務を少しずつ調整する
ことが、最も現実的な対応となります。
「まだ先」のように見える2026年10月は、実務の準備期間としては決して長くありません。
今からの積み重ねが、その後の数年間の負担を大きく左右します。
参考
- 日本経済新聞「免税事業者からの仕入れ控除、8割→7割に インボイス特例、政府・与党案」(2025年12月17日)
という事で、今回は以上とさせていただきます。
次回以降も、よろしくお願いします。

