2026年度税制改正大綱を読む⑧ 設備投資・研究開発・賃上げ税制はどう見直されたのか ― 「成長投資」をどう後押しするか ―

税理士
水色 シンプル イラスト ビジネス 解説 はてなブログアイキャッチのコピー - 1

2026年度税制改正大綱では、個人向けの所得税や資産形成だけでなく、企業活動に関わる税制も大きな柱として位置づけられています。
とくに、設備投資、研究開発、賃上げに関する税制は、「強い経済」の実現に向けた政策手段として整理されました。

本稿では、今回の改正における設備投資・研究開発・賃上げ促進税制の見直しについて、制度の方向性を中心に整理します。

今回の改正に共通する考え方

設備投資や研究開発、賃上げに関する税制は、これまでも数多くの特例が設けられてきました。
しかし、その結果として制度が複雑化し、必ずしも政策目的と実態が一致していないという課題も指摘されていました。

今回の改正では、
・成長につながる投資を明確に後押しする
・形式的な要件充足ではなく、実質を重視する
という考え方が強く打ち出されています。

単に「使える特例を探す」という発想ではなく、企業の行動変化を促す税制へと整理が進められています。

設備投資促進税制の位置づけ

設備投資に関する税制は、物価高や人手不足といった環境変化への対応策として位置づけられています。
省力化投資やデジタル化投資など、付加価値の向上につながる分野が重視されています。

今回の改正では、対象となる投資の範囲や要件について整理が行われ、
「投資額が大きいから優遇される」のではなく、
「経済全体の成長にどう寄与するか」が問われる構造になっています。

中小企業にとっては、制度の名称よりも、投資内容が政策目的と合致しているかを確認する姿勢が重要になります。

研究開発税制の強化と選別

研究開発税制については、引き続き重要な政策手段として位置づけられています。
一方で、研究開発の名の下に、実質的には通常の業務改善に近い支出が含まれているケースもありました。

今回の改正では、研究開発として評価すべき取り組みをより明確にし、
真に新規性や成長性のある分野を支援する方向が示されています。

制度が残るからといって、従来どおり自動的に適用できるとは限らず、
研究内容や成果との関係性を説明できるかが、これまで以上に重要になります。

賃上げ促進税制の見直し

賃上げ促進税制についても、見直しが行われています。
賃上げそのものを評価するという基本的な考え方は維持されているものの、制度の適正化が図られています。

単年度の形式的な賃上げではなく、
・継続性
・企業全体への波及
といった点が意識される構造へと移行しています。

企業にとっては、「税制のための賃上げ」ではなく、
人材確保や生産性向上と結びついた賃上げであるかどうかが問われる場面が増えていくと考えられます。

中小企業・個人事業者への影響

設備投資や研究開発、賃上げ税制は、大企業向けの制度と受け止められがちです。
しかし、実際には中小企業や個人事業者にとっても無関係ではありません。

とくに、
・IT投資
・業務の省力化
・外注から内製への切替
といった取り組みは、制度の対象となる可能性があります。

重要なのは、「税制があるから投資する」のではなく、
「事業の方向性と税制が重なった部分を活用する」という考え方です。


結論

2026年度税制改正大綱における設備投資・研究開発・賃上げ税制の見直しは、特例の単純な拡充ではありません。
成長に資する行動を選別し、税制を通じて後押しするという方向性が、より明確になっています。

今後は、制度の名称や要件だけを見るのではなく、
「なぜこの投資や賃上げが評価されるのか」という背景を理解した上で、税制を位置づけることが重要になります。

次回は、自動車関係諸税の見直しについて、家計・事業者・地方税への影響を整理します。


参考

・財務省「令和8年度税制改正大綱(令和7年12月26日 閣議決定)」


という事で、今回は以上とさせていただきます。

次回以降も、よろしくお願いします。

タイトルとURLをコピーしました