2026年度税制改正 第2回(家計編②)手取りは本当に増えるのか― 年収別・世帯別にみる減税効果とその限界

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前回は、2026年度税制改正で年収の壁が178万円まで引き上げられた背景を整理しました。
では、今回の改正によって、実際に家計の手取りはどの程度増えるのでしょうか。

減税という言葉から、大きな効果を期待する人も少なくありません。しかし、税制改正の影響は、年収や世帯構成によって大きく異なります。また、増えた手取りが恒久的なものかどうかも慎重に見ておく必要があります。

本稿では、年収別・家計別に減税効果を整理したうえで、その限界について考えます。

年収別にみた減税効果

政府の試算によると、今回の年収の壁引き上げを中心とした減税効果は、年収によって次のような差があります。

年収500万円の会社員では、2025年分と2026年分を合算して、年間およそ4万円台後半の減税効果が見込まれています。
年収600万円では5万円台半ば、年収800万円でも3万円台後半の減税効果とされています。

ここで重要なのは、減税額が最も大きくなるのが中所得層である点です。
低所得層はもともと税負担が軽く、高所得層は控除の上限により効果が抑えられます。その結果、年収500万〜665万円程度の層が最も恩恵を受ける設計になっています。

年末調整でどう反映されるのか

会社員の場合、今回の減税は2026年末の年末調整で反映されます。
毎月の給与が大きく増えるわけではなく、年末にまとめて調整される点には注意が必要です。

そのため、生活実感としては「いつの間にか少し戻ってきた」という印象になる可能性があります。
手取り増加を即効性のある物価高対策として捉えるには、やや分かりにくい仕組みといえます。

世帯構成による違い

今回の改正は、基本的に個人単位の所得税を対象としています。
そのため、配偶者控除や扶養控除といった家族構成に直接影響する制度は、大きくは変わっていません。

共働き世帯では、夫婦それぞれが控除の拡充を受けるため、世帯全体では一定の効果が期待できます。
一方、単身世帯や、すでに非課税となっている低所得世帯では、減税の実感は限定的です。

この点は、家計支援策としての限界ともいえます。

一時的な減税にとどまる可能性

今回の税制改正では、物価上昇に応じて控除額を見直す仕組みが新設されました。
ただし、現時点では恒久的な減税が約束されたわけではありません。

財源確保は先送りされており、将来の税制改正で控除の縮小や別の形での負担増が行われる可能性は否定できません。
減税が続くかどうかは、今後の財政状況や政治判断に大きく左右されます。

社会保険料との関係

家計の手取りを考えるうえで、税金だけを見るのは不十分です。
社会保険料は賃金の上昇とともに増える仕組みであり、減税分がそのまま手取り増につながらない場合もあります。

特に現役世代では、税よりも社会保険料の負担感が強くなっています。
今回の税制改正だけで、家計の可処分所得が大きく改善すると考えるのは現実的ではありません。


結論

2026年度税制改正による年収の壁引き上げは、確かに中所得層を中心に一定の減税効果をもたらします。
しかし、その金額は家計を大きく変えるほどではなく、実感しにくい面もあります。

また、財源問題や社会保険料の負担を考えると、今回の改正だけで手取りが安定的に増え続けるとは言い切れません。
家計支援策としての評価と同時に、その限界を冷静に見ておく必要があります。

次回は、視点を企業に移し、全産業を対象とした設備投資減税の中身と狙いを整理します。


参考

  • 日本経済新聞
    「税制改正、手取り増優先 年収の壁上げ」
    「物価高・ゆがみ是正を意識 税制こう変わる」

という事で、今回は以上とさせていただきます。

次回以降も、よろしくお願いします。

次はこちら↓

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