<企業編④(最終回)>政策減税はどこまで続くのか 租税特別措置と急ブレーキのリスク

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2026年度税制改正大綱を通して企業向け減税を眺めると、「減税は続くのか」という根本的な疑問に行き着きます。投資減税、賃上げ促進税制、研究開発税制といった政策減税は、いずれも企業活動を後押しする目的で導入されてきました。
一方で、これらは「租税特別措置」と呼ばれ、恒久的な制度ではありません。財政制約が強まる中で、政策減税がいつまで続くのかを冷静に考える必要があります。

租税特別措置とは何か

租税特別措置とは、特定の政策目的を達成するために、例外的に税負担を軽減する制度です。本来、税制はできるだけ中立であることが望ましいとされていますが、成長分野の育成や景気対策といった目的のために、例外が認められてきました。
企業向けの多くの政策減税は、この租税特別措置に位置づけられます。

なぜ整理が進まないのか

租税特別措置は、導入時には「期限付き」とされることが多いものの、実際には延長が繰り返される傾向があります。
理由の一つは、制度を利用している企業や業界からの要望が強いことです。もう一つは、景気や雇用への影響を懸念して、廃止に踏み切れないという政治的判断です。

今回の税制改正でも、賃上げ促進税制が完全には整理されず、研究開発税制も形を変えて存続しています。減税の「出口戦略」は明確とは言えません。

急ブレーキのリスク

問題は、整理が進まないまま制度が積み重なり、ある時点で急激な見直しが行われるリスクです。
財政状況が悪化した場合や、政治環境が大きく変わった場合には、政策減税が一気に縮小される可能性があります。その場合、税制を前提に投資や賃金戦略を組み立てていた企業ほど、影響を受けやすくなります。

これは、過去の税制改正でも繰り返されてきた現象です。

経営者に求められる視点

経営者にとって重要なのは、政策減税を「前提条件」にしないことです。
減税はあくまで一時的な追い風であり、事業の採算性や競争力そのものを保証するものではありません。税制が変わっても持続できる経営構造を持つことが、長期的には最も重要です。

中小企業にとっての現実

中小企業の場合、政策減税の恩恵は限定的であることも少なくありません。制度の要件を満たすための事務負担や、専門家への依存度が高まるという側面もあります。
そのため、減税が使えるかどうかだけでなく、使えなかった場合でも成り立つ経営計画を立てておくことが現実的です。

今後の見通し

2026年度税制改正を見る限り、当面は減税と投資促進を重視する流れが続く可能性があります。ただし、社会保障費や防衛費の増加が避けられない中で、いずれ財源確保の議論が本格化することは避けられません。
そのとき、租税特別措置は真っ先に見直しの対象となるでしょう。

結論

政策減税は、企業活動を後押しする有効な手段である一方、永続的なものではありません。2026年度税制改正大綱は、減税を並べつつも、その持続可能性に疑問を残しています。
企業経営者にとって重要なのは、税制に依存しない強い事業基盤を築くことです。減税は活用しつつも、それがなくなっても耐えられる経営こそが、これからの時代に求められます。

参考

日本経済新聞「家計・企業の減税ずらり 来年度税制大綱、与党詰め」(2025年12月13日)


という事で、今回は以上とさせていただきます。

次回以降も、よろしくお願いします。

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