食品消費税ゼロと安保強化が同時に語られる選挙――「似てきた公約」の中で、有権者が確認すべき論点

政策

衆院選が戦後最短の短期決戦となる中、与野党の公約が「消費税(食品ゼロ)」「安保強化」「分配」の方向で似通ってきました。自民党が国政選挙で消費税減税を公約に明記するのは初めてとされ、参院選からの転換も鮮明です。
一方で、財源や制度設計の核心は「選挙後に国民会議で協議」と先送りされ、社会保障改革など痛みを伴う論点は棚上げになりがちです。ここでは、政策の見取り図を補足し、有権者として最低限確認したいチェックポイントを整理します。

1.自民公約案の中身は「減税」と「安保」のセット

自民党の公約原案は、食品の消費税を2年間ゼロにする方針を明記しつつ、財源は示さず、開始時期も含めて選挙後の超党派協議に委ねる構えです。あわせて給付付き税額控除の制度設計を進めるとしています。
さらに、経済安全保障を前面に出し、「自律性」と「不可欠性」をキーワードに、重要鉱物の供給確保などを通じて「経済的威圧に屈しない日本」を掲げます。防衛面では、年内に安保関連3文書の改定、装備移転の推進など、安保強化色も強めています。
家計支援(減税)と国家戦略(安保・経済安保)を同じ公約のパッケージで提示するのが、今回の特徴です。

2.「食品ゼロ」は家計に効くが、論点は財源と出口

食品消費税ゼロは分かりやすい政策です。日々の買い物に直結し、心理的な安心感もあります。
ただし、問題は「どう埋めるか」と「戻せるか」です。軽減税率(8%)をゼロにすると税収は年5兆円規模減るとされ、2年限定でも累計の穴は大きくなります。財源を伴わない減税は、財政への信認低下を通じて円安・金利上昇を招き、結果として物価高を悪化させかねません。
また、2年後に税率を戻すとき、家計の反発だけでなく、事業者側のシステム再改修、価格表示・請求書対応の再変更が再度発生します。「一度下げた税率を戻せるのか」という疑問は、制度の出口戦略そのものです。

3.「減税ポピュリズム」批判が突くポイント

社説が強調するのは、消費税が社会保障の安定財源である点です。所得税や法人税より景気変動の影響を受けにくく、全世代で支える設計になっている。ここを大きく揺らすなら、代替財源の恒久性が不可欠になります。
さらに、消費税減税は高所得層にも広く恩恵が及び、政策効率が落ちやすいという問題もあります。物価高に苦しい層を狙い撃ちするなら、給付付き税額控除のようなターゲティング政策の方が筋が良い、という主張はここにつながります。

4.公約が似るほど「比較軸」が重要になる

与党(自民・維新)も、野党の中道改革連合も、消費税減税を掲げ、安保でも現実路線に寄り、政策の差は見えにくくなっています。短期決戦では、どうしても分かりやすい分配政策やイメージ戦略が前に出ます。
だからこそ、有権者が見るべき比較軸は「何をやるか」よりも、「どうやってやるか」です。具体的には次の3点です。

  • 財源の質:一時しのぎ(基金の取り崩し等)なのか、恒久財源(制度として毎年確保)なのか
  • 制度の設計図:開始時期、対象範囲、価格転嫁の見込み、事業者負担(レジ・会計・インボイス対応)まで落とし込めているか
  • 出口戦略:2年限定なら、戻す条件と手順を示せるか(戻せないなら恒久化の議論に移るべき)

5.棚上げされがちな「本丸」こそ質問したい

消費税と安保が前面に出る一方で、年金・医療・介護を含む社会保障改革や、政治改革は後景に退きがちです。ところが、減税の財源問題は社会保障の持続性と直結します。
「選挙後に国民会議で議論する」と言うなら、最低限、選挙中に示すべきなのは“議論の前提”です。たとえば、財政健全化の目標(指標)をどう置くのか、社会保障の給付と負担の見直しをどの順番でやるのか、といった工程表が必要になります。
減税の是非だけではなく、「減税と社会保障をどう両立させるか」が、実は選挙の核心です。

結論

今回の衆院選は、食品消費税ゼロが象徴する「分かりやすい支援策」と、経済安保・安保強化という「国家の設計図」が同時に語られる選挙になりました。
公約が似てきた今、有権者が見るべきは、政策のスローガンではなく、財源・制度設計・出口戦略の具体性です。短期決戦で議論が浅くなりやすいからこそ、各党に「数字と工程表」を求める姿勢が、将来世代への責任につながります。

参考

・日本経済新聞「自民公約案に減税・安保強化 参院選から転換」
・日本経済新聞「消費減税ポピュリズムに未来は託せぬ」
・日本経済新聞「〈衆院選2026〉有権者の判断材料乏しく」


という事で、今回は以上とさせていただきます。

次回以降も、よろしくお願いします。

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