銅価格が高騰し続ける理由と生活・産業への影響

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銅の価格上昇が止まりません。国内指標となる銅建値は歴史的な高値圏にあり、昨年末比で25%も上昇しています。背景には国際市況の上昇と円安が重なる構図があり、その影響は伸銅品や電線、建設資材、自動車部品など幅広い分野に及んでいます。家計や企業活動にとっても決して無関係ではないテーマであり、今回は銅高騰の要因と日本経済への波及、そして今後の見通しについて整理します。

1 銅建値は過去最高水準、日本だけでなく世界的な高騰に

国内で公表されるJX金属の銅建値は2025年12月1日時点で1トン180万円に達し、2024年5月の過去最高値を上回りました。
昨年末からの上昇率は25%で、この5年間で国内平均価格は2倍以上の水準に切り上がっています。

銅建値を左右するのは、

  • ロンドン金属取引所(LME)価格
  • 為替(円安)

の2つです。
LMEでは鉱山事故や生産不安を背景とした供給懸念が強まっており、11月下旬には過去最高値を更新しました。そこへ円安が重なり、日本の輸入コストを押し上げる構造です。

2 銅高騰が産業に波及:伸銅品、電線、建設資材、自動車部品

銅は「産業の血管」と呼ばれ、建設、住宅設備、電線、自動車、再エネ設備など幅広い用途に使われます。そのため銅価格の高騰は各所に影響を及ぼしています。

■ 伸銅品(黄銅丸棒など)

代表的な製品である黄銅丸棒(25ミリ)の卸売取引価格は1kgあたり1417円前後となり、昨年末比で約2割上昇しています。

一方で住宅着工の減少による需要低迷が続いており、「需要が弱いのに価格が上がる」という逆風が製造・流通を直撃しています。

■ 代替材料へのシフト

銅の高値は「材料転換」を促しはじめています。

  • 建設業界では 黄銅 → ステンレス鋼 への切り替え検討が広がる
  • バルブ・機械装置分野でも、ステンレスの価格差縮小で代替が進む可能性

ステンレスは銅より耐久性に優れますが割高とされてきました。しかし銅高騰で相対価格差が縮小し、材料選択が変化しつつあります。

■ 電線価格の高騰と盗難問題

太陽光発電所、工場、ビルなどで使われる電線も値上がりしています。以前から電線盗難が社会問題となってきましたが、2025年には金属くず買い取り業者の規制を強化する「金属盗対策法」が成立しました。

業者からは「電線盗難は減少傾向にあるものの、警戒は非常に強い」との声があり、高騰によるリスク管理強化は依然必要な状況です。

3 電線メーカーはアルミケーブルの拡販へ

銅価格の上昇を受け、電線メーカーはアルミ製ケーブルの普及に力を入れています。

アルミは銅の約4分の1の価格で、原材料コストを大きく抑えられます。
一方、導電性は銅より劣るため、ケーブルを太くするなど設計面の工夫が求められます。

住電HSTケーブルは「受け身から攻めへ」と方針を変え、アルミケーブルの拡販を進めています。

4 銅でなければ代替できない分野も多い

一方で、銅は「万能に代替できる素材」ではありません。

とくに、

  • データセンター向け銅箔
  • EV(電気自動車)部品
  • 再エネ設備(太陽光、風力)
  • 半導体製造装置

など、高い導電性が求められる分野では銅の需要がむしろ拡大しています。

AI普及でデータセンター需要が急増していることから、三井金属は銅箔などの生産能力増強を打ち出しており、日本企業の投資も続いています。

5 銅高騰は生活者・企業にどう影響するか

■ 生活者への影響

銅は家電、住宅設備、水道部品、自動車などにも広く使われるため、銅高はやがて生活コストにも波及します。

  • 住宅リフォーム費の上昇
  • 給湯器やガス設備の値上げ圧力
  • 自動車部品価格の上昇

などが想定されます。

■ 企業への影響

特に中小企業は材料費の圧迫を受けやすく、価格転嫁がうまく進まない場合は収益悪化に直結します。

  • 建設業
  • 設備工事会社
  • 製造業(バルブ、金具、配管部品)
  • 電気工事会社

などは原価管理と材料調達の再検討が必須です。

6 今後の見通し:銅高は続くのか?

銅価格は以下の要因を受けやすい構造です。

  • 供給懸念(鉱山事故・地政学リスク)
  • 世界の電動化・AI化による需要増
  • 為替の円安基調
  • 投資資金の流入(コモディティ市場への資金シフト)

特にAIや電動化に伴うデータセンター・EV向け需要は中期的に強いとみられ、銅の構造的な不足が指摘されています。
一方で、建設需要が弱い日本では需要低迷と価格上昇のギャップがしばらく続く可能性があります。

結論

銅の高騰は単なる素材価格の話にとどまらず、建設、設備、自動車、再エネ、データセンターと、経済の広い領域に影響を与えるテーマです。代替材料へのシフトが進む一方で、銅でなければ代替できない分野では需要がさらに増加するなど、産業構造の変化も生まれています。今後も国際市況と為替動向が大きなカギを握るため、企業と生活者は引き続き動向に注意する必要があります。

出典

・日本経済新聞「銅、高騰止まらず」(2025年12月2日朝刊)


という事で、今回は以上とさせていただきます。

次回以降も、よろしくお願いします。

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