金利上昇はどこまで続くのか 住宅ローン・家計・投資への影響を専門家視点で整理する

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長期金利がじわじわと上昇し、心理的な節目となる2%に近づいています。財政拡大への懸念や日銀の利上げ観測が重なり、債券市場では「先高観(さらなる金利上昇)」がくすぶった状態が続いています。債券価格の下落は金融機関の含み損を生み、金利上昇は住宅ローンの負担増につながるなど、家計にも無視できない影響が及びます。

この記事では、最近の金利動向をわかりやすく整理しつつ、家計・投資・住宅ローンにどのような影響が生じるのかを税理士・FP視点で解説します。

1 長期金利上昇が意識される背景

長期金利が上昇する要因は複数あります。まず、財政拡大への懸念が強まっている点が大きいといえます。経済対策が相次ぎ、国債増発の観測が出ていることで、債券市場では需給バランスの悪化が意識されています。

2025年12月初旬の10年国債入札は堅調でしたが、利回りは17年半ぶりの高水準に接近しました。一定の需要はあったとはいえ、投資家からは「値下がりリスクを考えると積極的に買いにくい」という声も聞かれます。

加えて、日銀の利上げペースを巡る思惑も金利上昇圧力となっています。日銀総裁の発言を受け、年内の追加利上げ観測が強まり、翌日物金利スワップなど市場の期待インフレ率・金利期待が上方に動いています。市場では「2026年末までに2回程度の利上げがある」との見方が一般的になりつつあります。

2 金利上昇は“良い金利上昇”か、それともリスク要因か

経済が成長し、物価・賃金が安定的に上向く局面では、金利上昇は必ずしも悪いことではありません。しかし、経済成長率が金利の上昇に追いつかない場合、政府債務残高のGDP比が悪化し、将来的な財政リスクが顕在化します。

これは、家計で例えると「収入以上のスピードで借金の利息が膨らむ」状態に近く、長期的には持続性に疑問が生じます。

また、金利上昇は金融市場にも影響します。国債を多く保有する銀行では含み損が膨らみ、株式市場では金利上昇を嫌気して株価が下落しやすくなります。2025年12月初旬にも、日経平均株価が大きく調整する局面が見られました。

3 家計への影響:住宅ローンは“静かに痛い”状況

金利上昇局面で真っ先に影響を受けるのが住宅ローンです。大手銀行は2025年12月、10年固定型の住宅ローン金利を引き上げました。

住宅金融支援機構や銀行の金利は長期金利と連動性が高いため、今後も2%台に乗る可能性が十分にあります
特に、以下の点には注意が必要です。

  • 固定金利型(フラット35など):申込月の金利に応じて支払総額が変わるため、金利1%の差で総返済額が数百万円単位で変わる可能性があります。
  • 変動金利型:短期金利が指標となるものの、長期金利が安定しない局面は金融機関の金利方針に影響し、将来の上昇リスクが増します。
  • 5年ルール・125%ルールの限界:急激な返済額増加は抑えられますが、総利息が増えていることに気づきにくい点が大きな落とし穴です。

2024〜2025年に住宅ローンを組んだ人の多くは「低金利前提」の資金計画を立てています。今後、金利が2%を超える局面では、家計の再設計が必要となるケースが増えるでしょう。

4 投資への影響:債券・株式・投資信託の見直し

金利上昇局面は、債券価格が下落しやすいため、長期国債・債券ファンドは基準価額が下がりやすい環境です。また、株式市場では景気敏感株やハイテク株が調整しやすくなります。

一方で、金利上昇は次のようなプラス面もあります。

  • 定期預金や個人向け国債の利率が徐々に改善
  • 債券ファンドでは再投資利回りが上昇
  • 金利上昇で恩恵を受ける金融株が注目されやすい

投資家にとって重要なのは、「金利の上昇が構造的なのか、一時的なのか」を見極めることです。短期金利と長期金利の差(イールドカーブ)や、国債増発の規模、日銀の政策姿勢を注視する必要があります。

5 今のうちに家計が取るべき3つの備え

今後、金利が2%を超えていく可能性を踏まえると、家計ができる対策は次の通りです。

  1. 住宅ローンの借換え検討
     固定への切替や金利タイプの見直しで、長期的な利息負担を抑えられます。
  2. 貯蓄と負債のバランスの再計画
     教育費・老後資金と住宅ローンのバランスを可視化し、利上げに耐えられる家計に調整します。
  3. 投資ポートフォリオの再点検
     債券比率の見直し、金利上昇に強い資産(短期国債、金融株、浮動利付債など)への配分検討も有効です。

金利上昇は家計に確実に影響しますが、適切に対応すればリスクをコントロールできます。

結論

金利上昇は日本経済にとって転換点となる可能性があります。財政拡大や日銀の政策姿勢の変化が影響し、2%超えが“時間の問題”と考える市場関係者も少なくありません。家計にとっては住宅ローン負担や投資リスクの増大が避けられない一方、金利上昇によるメリットも存在します。

大切なのは、金利動向を正しく理解し、住宅ローン・貯蓄・投資のバランスを早めに見直すことです。金利が大きく動く局面は、家計管理を見直す絶好のタイミングでもあります。

参考

・日本経済新聞「金利、くすぶる先高観」(2025年12月3日)
・日銀公表資料
・財務省 国債発行計画関連資料
・金融機関公表金利データ


という事で、今回は以上とさせていただきます。

次回以降も、よろしくお願いします。

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