選挙と消費税を切り離して考えるという視点

政策

衆院選を前に、各党の公約や街頭演説では消費税の減税や廃止を訴える声が目立っています。物価高への不安が広がるなか、有権者の関心が高いテーマであることは確かです。しかし、消費税は単なる景気対策の道具ではなく、日本の社会保障制度を支える基幹税でもあります。
短期的な人気取りとして消費税を扱う政治姿勢が、将来世代にどのような影響を及ぼすのか、冷静に考える必要があります。

消費税は「軽い税」ではない

消費税は1989年に導入され、その後も政治的な困難を伴いながら税率引き上げが行われてきました。10%への引き上げも、単独政党の判断ではなく、複数政党による合意形成の結果です。
その背景には、高齢化の進展により社会保障給付が拡大するという、避けて通れない現実があります。消費税は、年齢や職業を問わず、生活水準に応じて広く負担を分かち合う仕組みとして位置づけられてきました。この経緯を軽視した議論は、制度の信頼性そのものを損ないます。

物価高対策と税制改革は分けて考える

足元の物価高への対応は重要です。ただし、それと消費税制度の抜本的な見直しを混同すべきではありません。
消費税を引き下げれば、どのような経路で家計や経済全体が改善するのか、また財源不足をどのように補うのかについて、説得力ある説明は十分とは言えません。短期的な負担軽減と、長期的な財政・社会保障の持続性は、本来切り分けて議論されるべきものです。

軽減税率議論の曖昧さ

食料品を中心に軽減税率を拡充すべきだという主張もあります。欧州諸国の制度を参考にするのであれば、軽減税率と標準税率の関係を含め、税体系全体を一体で設計する必要があります。
しかし現実には、免税なのか非課税なのかといった制度設計の違いが整理されないまま、事業者や価格への影響が曖昧な議論が先行しています。制度の不透明さは、現場の混乱を招くだけです。

インボイス廃止論がもたらすもの

消費税の簡素化を理由に、インボイス制度の廃止を唱える声もあります。しかし、インボイス制度は消費税の公平性と透明性を確保するために導入された仕組みです。
これを十分な代替案もなく否定すれば、消費税制度そのものへの信頼が揺らぎます。結果として、税への納得感が失われれば、将来の制度運営はさらに困難になります。

八方美人な政策への警戒

選挙後、複数政党による多数派形成が見込まれる状況では、幅広い支持を狙った「八方美人」な政策が打ち出されやすくなります。しかし、消費税は妥協の産物として軽々しく扱えるテーマではありません。
世界的に見れば、地政学リスクや産業競争力の強化など、政治が本来集中すべき課題は数多くあります。

結論

消費税は、日本社会の持続性を支える基盤です。選挙のたびに揺さぶられる存在であってはなりません。
目先の人気や不安に流されるのではなく、将来世代を含めた責任ある議論と説明を積み重ねる政治が求められています。消費税に翻弄されない政治への転換こそが、いま最も重要な課題だといえるでしょう。

参考

日本経済新聞 十字路
消費税に揺さぶられぬ政治を(2026年2月3日)


という事で、今回は以上とさせていただきます。

次回以降も、よろしくお願いします。

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