財源なき消費減税がもたらす本当のリスク

政策

衆院選を前に、消費税減税を掲げる政党が相次いでいます。物価高への対応として家計支援を打ち出す姿勢は理解できますが、減税に伴う財源の議論は十分とは言えません。こうした状況に対し、経済界や労働団体からは強い懸念の声が上がっています。
本稿では、財源なき消費減税が抱える問題点を、財政・企業活動・金融市場・社会保障の視点から整理します。

消費減税に向けられる経済界・労働団体の警戒感

消費税減税について、日本商工会議所や経団連、経済同友会などの経済団体は一貫して慎重な姿勢を示しています。共通する指摘は、「減税ありきで議論が進み、代替財源が明確にされていない」という点です。
また、労働団体の連合も、家計支援の必要性を認めつつ、財源が不透明なままでは将来不安を強めかねないと懸念を示しています。減税のメリットだけでなく、デメリットやリスクを共有したうえでの議論が求められています。

減税規模と財源不足の現実

仮に食料品の消費税率をゼロにすれば、年間で約5兆円の税収が失われます。消費税率を一律5%に引き下げる場合、その影響は約15兆円規模に及びます。
一方で、これに見合う恒久的な財源は示されていません。租税特別措置や補助金の見直しが候補に挙げられていますが、それだけで穴を埋めるのは容易ではありません。

法人減税縮小への警戒

代替財源として注目されているのが、法人向けの租税特別措置の見直しです。研究開発投資や賃上げを後押しするための制度は、企業の中長期的な成長戦略と密接に結びついています。
これらを安易に縮小すれば、投資意欲の低下や賃上げの停滞につながりかねません。経済界が「法人減税の縮小は看過できない」と警戒するのは、短期的な財源確保と引き換えに成長力を損なうリスクを意識しているためです。

金融市場への影響

財源の裏付けがない減税政策は、金融市場にも影を落とします。財政規律への不安が高まれば、国債の信認低下や長期金利の上昇、円安進行を招く可能性があります。
金利上昇は企業の資金調達コストを押し上げ、円安は輸入物価を通じて再び家計を圧迫します。結果として、減税による家計支援の効果が相殺されるおそれもあります。

消費税という安定財源の意味

消費税は、景気変動の影響を比較的受けにくく、社会保障制度を支える安定財源として位置づけられてきました。年金、医療、介護といった制度は、少子高齢化が進む中で今後ますます財源を必要とします。
消費税を軽々に削減するということは、社会保障制度の将来像そのものを問い直す行為でもあります。減税を行うのであれば、給付のあり方や制度改革とセットで議論することが不可欠です。

おわりに

消費税減税は分かりやすく、有権者の支持を得やすい政策です。しかし、財源を伴わない減税は、将来世代への負担先送りや経済の不安定化を招きかねません。
本当に必要なのは、「どこから財源を持ってくるのか」「その結果、誰がどのような影響を受けるのか」を正面から示すことです。短期的な人気取りではなく、持続可能な財政と社会保障を見据えた議論が、今こそ求められています。

参考

・日本経済新聞「財源なき消費減税に懸念」


という事で、今回は以上とさせていただきます。

次回以降も、よろしくお願いします。

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