補正予算18.3兆円は何を相殺したのか 財政拡張と利上げがぶつかる日本経済

FP

2025年度補正予算が成立し、一般会計の規模は18兆円を超えました。コロナ禍後では最大規模となる財政出動です。一方で、日本銀行は金融緩和の正常化を進め、追加利上げが確実視されています。
本来、財政と金融は景気や物価に対して補完的に機能することが望まれますが、今回の補正予算は利上げによる物価抑制効果を相殺しかねない内容となっています。この記事では、補正予算の規模と中身を確認しながら、財政と金融のねじれがもたらす影響を整理します。

補正予算18.3兆円の特徴

今回成立した補正予算は、一般会計で18兆3034億円にのぼります。物価高対策として家計向け支援が中心となり、電子クーポンや給付金、子ども1人あたり2万円の現金給付などが盛り込まれました。
また、防衛力強化として1.1兆円が計上され、当初予算と合わせた防衛費は約11兆円となります。これはGDP比2%という政府目標を前倒しで達成する水準です。

内容を見れば、短期的には需要を押し上げる政策が色濃く、景気下支えを意識した構成だといえます。

需給ギャップと物価の関係

内閣府の推計では、直近の需給ギャップはほぼゼロとなっています。過度な需要不足の局面ではなく、供給制約が残るなかで需要を刺激すれば、物価上昇圧力が強まりやすい局面です。
実際、生鮮食品を除く消費者物価指数は40カ月以上にわたり2%を超え、足元では3%台で推移しています。円安による輸入物価の上昇も重なり、インフレ圧力は依然として強い状況です。

利上げと財政拡張のちぐはぐさ

日本銀行は政策金利を0.75%程度まで引き上げる公算が大きく、これは約30年ぶりの水準となります。利上げには円安の是正や物価抑制の効果が期待されます。
しかし同時に、大規模な補正予算によって需要を押し上げれば、金融引き締めの効果は弱まります。市場関係者からは、コロナ後にこれほどの財政出動が本当に必要なのかという疑問も出ています。

国債発行と財政規律への懸念

補正予算に伴う国債の追加発行は約12.7兆円と見込まれ、国債発行総額は前年度を上回ります。2026年度にはプライマリーバランスも再び赤字に転じる可能性が高まっています。
日本の債務残高GDP比は200%を超え、主要国の中でも突出しています。金利が上昇すれば、利払い費は着実に増え、将来の財政運営を圧迫します。特に超長期国債の需給悪化は、金利上昇リスクを意識させる要因です。

結論

今回の補正予算は、家計支援や防衛力強化という政策目的自体は明確です。しかし、物価がすでに高止まりする中での大規模な財政拡張は、日銀の利上げによる物価抑制効果を相殺する側面を持ちます。
財政と金融が異なる方向を向いたままでは、市場の不信感や金利上昇リスクを高めかねません。今後は、短期的な景気対策と中長期的な財政持続性をどう両立させるのかが、2026年度予算編成における最大の課題となります。

参考

日本経済新聞
補正予算18.3兆円成立 歳出膨張、利上げ効果相殺(2025年12月17日)


という事で、今回は以上とさせていただきます。

次回以降も、よろしくお願いします。

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