維新の税制改正要望は「成果づくり」か「存在証明」か

FP
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日本維新の会が、連立政権入り後に税制改正をめぐる要望を前面に打ち出しています。高校生扶養控除の維持やひとり親控除の拡充など、一見すると家計支援色の強い項目が並びましたが、その背景には連立参加の成果が見えにくいという事情があります。
本稿では、維新の税制改正要望の中身を整理したうえで、政策的な意味合いと政治的な狙いを考えます。

維新が打ち出した4つの税制改正要望

維新の吉村洋文代表が首相に申し入れた要望は、次の4点です。

第一に、高校生年代の子を持つ世帯に対する扶養控除の維持です。2026年度税制改正では、子育て支援策の組み替えの一環として、高校生扶養控除を縮小する案が検討されてきました。維新はこれに強く反対し、現行制度の維持を求めています。

第二に、ひとり親控除の控除額引き上げです。低所得世帯や単身で子を育てる世帯への支援強化という位置づけで、維新が従来から重視してきたテーマの一つです。

第三に、租税特別措置を受けている企業名の公表です。政策減税の透明性を高める狙いがありますが、実現すれば企業側への説明責任が強まることになります。

第四に、交際費課税の見直しです。企業が経費として計上できる交際費の非課税枠の拡大が念頭にあり、中小企業支援色の強い要望といえます。

高校生扶養控除は「象徴的テーマ」

今回の要望の中で、最も注目度が高いのが高校生扶養控除です。
政府・与党は、教育関連給付や現金給付とのバランスを理由に、控除の整理・縮小を検討してきました。一方で、控除縮小は実質的な増税と受け止められやすく、子育て世帯の反発も強いテーマです。

維新がここに切り込んだのは、子育て世代への配慮を明確に示すと同時に、「連立によって止めた政策がある」という実績をつくりたい意図が透けて見えます。政府高官が「維持に向けて調整する」と述べたことは、一定の成果といえますが、最終決着は税制改正大綱次第です。

「透明性」と「企業支援」の両にらみ

租税特別措置の企業名公表と交際費課税の見直しは、一見すると方向性が異なります。前者は企業へのチェック強化、後者は企業支援です。
これは、維新が改革政党としての姿勢と、現実的な経済政策の両立を意識していることの表れといえます。ただし、企業名公表については自民党内の慎重論が根強く、実際に制度化されるかは不透明です。

連立の成果が問われる維新の立場

今回の税制改正要望の背景には、連立入り後の「成果不足」への焦りがあります。
最重点課題だった衆院議員定数削減は法案提出にとどまり、企業・団体献金規制や医療費削減も思うように進んでいません。特に、OTC類似薬の保険適用除外を巡る議論が見送られたことは、維新にとって痛手でした。

税制改正は、比較的短期間で成果を示しやすい分野です。維新にとって今回の要望は、政策の中身以上に「連立に参加した意味」を示すための試金石となっています。

結論

維新の税制改正要望は、家計支援や企業支援といった政策的合理性を持ちながらも、同時に連立政権内での存在感を示す政治的メッセージでもあります。
特に高校生扶養控除の扱いは、今後の税制改正議論の象徴的な争点となりそうです。連立の「成果」をどこまで形にできるのか、維新にとって正念場が続きます。

参考

・日本経済新聞「維新、首相に税制改正要望」(2025年12月17日朝刊)


という事で、今回は以上とさせていただきます。

次回以降も、よろしくお願いします。

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