税務調査の終盤、調査官から
「この点について修正申告をお願いします」
と言われると、多くの人はこう考えます。
- 専門家が言うのだから正しいのだろう
- 早く終わらせたい
- 争うと面倒になりそう
そして、そのまま修正申告に応じてしまう。
しかし実務上、税務署に言われたまま修正することが、必ずしも最善とは限りません。
本稿では、「言われたまま修正してはいけない理由」を、感情論ではなく実務判断として整理します。
税務調査は「決定」ではなく「指摘」である
まず大前提として、税務調査で行われているのは、
税務署による最終決定ではありません。
調査官が示すのは、
- 調査官個人としての判断
- 税務署側の見解
にすぎません。
法的に確定するのは、
- 修正申告を提出したとき
- 更正処分が出たとき
です。
つまり、修正申告を出すかどうかは、納税者側の選択です。
修正申告は「自認」になる
修正申告を行うということは、
「自分の申告が誤っていた」
と自ら認める行為です。
これは、
- その年度
- その税目
だけにとどまりません。
- 他年度も同様ではないか
- 他税目も同様ではないか
という視点で、調査が広がる可能性があります。
言い換えれば、一度の修正が、別の調査の入口になることもあるということです。
修正すると「連鎖」が確定してしまう
経費否認や区分誤りの修正は、
単なる損金不算入で終わらないことがあります。
- 消費税の仕入税額控除
- 源泉所得税
- 場合によっては社会保険
といった、別の税目への波及が、修正申告によって確定してしまうことがあります。
調査段階では、
「そこまでは考えていなかった」
論点が、修正後に一気に動き出すケースも少なくありません。
調査官の説明が常に十分とは限らない
多くの調査官は誠実ですが、
- 時間的制約
- 事案への理解不足
から、説明が十分でないまま修正を求めることもあります。
例えば、
- 事実関係の一部だけで判断している
- 例外的な事情を考慮していない
- 実務上のグレーを黒寄りで整理している
といったケースです。
この段階で立ち止まらずに修正すると、
本来争えたはずの論点まで失うことになります。
修正すると「後戻り」は難しい
一度修正申告を提出すると、
- その内容を前提に課税関係が確定
- 取り消しや再主張が困難
になります。
理論上は、
- 更正の請求
- 不服申立て
といった手段もありますが、
実務上はハードルが高いのが現実です。
「とりあえず修正して、あとで考える」
という判断は、ほぼ通用しません。
「争う=対立」ではない
「税務署に言われたまま修正しない」と聞くと、
- 対立する
- 揉める
といったイメージを持つ人もいます。
しかし実務では、
- 事実確認を求める
- 根拠の説明を求める
- 一度持ち帰って検討する
といった対応は、ごく普通のことです。
冷静に確認することと、感情的に反発することは全く別です。
修正前に必ず確認すべきポイント
修正申告に応じる前に、最低限、次の点は確認する必要があります。
- 指摘の前提となる事実は正しいか
- 法令・通達の根拠は何か
- 他税目・他年度への影響はあるか
- 修正しない場合の選択肢は何か
これらを整理したうえで修正するかどうかを決めることが、
実務としての正解です。
修正申告は「判断の結果」である
修正申告は、
- 楽な選択
- 逃げの選択
ではありません。
- 争うべきところは争った
- 引くべきところは引いた
そのうえで、
全体として最も合理的な着地点を選ぶ行為
です。
だからこそ、言われたままではなく、
「理解したうえで修正する」
必要があります。
結論
税務署に言われたまま修正してはいけない理由は、
- 修正申告が納税者の選択であること
- 修正が連鎖を確定させること
- 後戻りが難しいこと
にあります。
重要なのは、
「修正するか、しないか」ではなく、
「なぜ修正するのかを自分で説明できるか」です。
税務調査対応とは、
単なる作業ではなく、
経営判断としての意思決定です。
だからこそ、修正申告は、
税務署に言われたままではなく、
自分の判断として行うべきものといえるでしょう。
参考
・国税通則法
・法人税法・所得税法
・税のしるべ(税務調査関連記事)
という事で、今回は以上とさせていただきます。
次回以降も、よろしくお願いします。
