申告を終えてしばらく経った頃、知らない番号から着信が入る。
留守電を聞くと「税務署の〇〇ですが…」。
文書よりも、電話の方が心理的なハードルは高いものです。
しかし、近年の税務行政では、電話による確認はごく一般的な手続きになっています。
本記事では、税務署から電話がかかってきた場合に、個人事業主が落ち着いて対応するための実務ポイントを整理します。
まず確認すべきこと
電話を受けたら、最初に確認したいのは次の3点です。
・相手の所属(税務署名・担当部署)
・担当者の氏名
・電話の用件
この確認は失礼にはあたりません。
税務署側も、本人確認や行き違い防止のために、名乗り直すことには慣れています。
その場で即答しなくてよい
電話口で質問されると、反射的に答えたくなるかもしれませんが、即答できない内容は無理に答える必要はありません。
たとえば、
・金額の内訳
・過去の取引内容
・帳簿や証憑の有無
こうした内容については、「確認して折り返します」「資料を見てから回答します」と伝えて問題ありません。
不正確な回答をしてしまう方が、後々の説明が難しくなります。
電話の目的は「事実確認」が中心
税務署からの電話は、多くの場合、
・申告書の記載内容の確認
・数字の整合性チェック
・添付書類に関する質問
といった事実確認が目的です。
この段階で、結論が決まっているケースはほとんどありません。
「電話が来た=何か重大な問題がある」と考えすぎないことが大切です。
話す内容は「聞かれたことだけ」
電話対応で重要なのは、聞かれていないことまで話さないことです。
善意で背景説明をしたつもりが、
・新たな疑問を生む
・別の論点が広がる
といったことも起こり得ます。
質問された内容に対して、事実と数字を簡潔に伝える。それが基本姿勢です。
メモを取りながら対応する
電話対応中は、必ずメモを取りましょう。
・質問内容
・確認を求められた事項
・提出や回答の期限
・次のアクション
後で内容を整理するためにも、記録は重要です。
特に、後日文書提出が求められる場合は、認識違いを防ぐ意味でも有効です。
曖昧なまま終わらせない
電話の最後には、
・次に何をすればよいのか
・いつまでに対応すればよいのか
を確認しておきます。
「今日はここまでで大丈夫ですか」「次は文書で提出すればよいですか」といった確認をしておくと安心です。
内容次第では専門家に切り替える
電話の内容が、
・金額が大きい
・過去数年分に及ぶ
・判断に迷う論点がある
と感じた場合は、その場で「税理士に相談してから回答したい」と伝えることも可能です。
無理に一人で抱え込む必要はありません。
電話対応で避けたい行動
避けたいのは、
・感情的になる
・曖昧な記憶で断言する
・「多分」「昔のことなので分からない」と繰り返す
こうした対応は、結果的に確認事項を増やしてしまう原因になります。
結論
税務署からの電話は、調査の入口というよりも、確認と整理のための連絡であることが大半です。
大切なのは、
・落ち着いて話を聞く
・即答せず、確認する
・事実ベースで簡潔に対応する
この基本を守ることで、不要な不安や手間は避けられます。
日頃から帳簿や資料を整理しておくことが、電話一本に振り回されない最大の備えです。
参考
・税のしるべ「令和6事務年度の所得税調査等の状況」(2025年12月15日)
・国税庁「所得税及び消費税調査等の実施状況に関する公表資料」
という事で、今回は以上とさせていただきます。
次回以降も、よろしくお願いします。
