税制改正2026を読み解くシリーズ 第7回 企業への影響:防衛増税・EVシフト・賃上げとの関係

税理士
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2026年度税制改正は、家計だけでなく企業活動にも大きな影響を及ぼす内容が含まれています。特に注目されるのは、防衛財源に関連した法人税の扱い、EVシフトに伴う自動車税制の再構築、さらに政府が強く求める「持続的な賃上げ」に対し、税制がどのように役割を果たすのかという点です。

企業にとって税制は、コスト構造、投資判断、人材戦略、研究開発、サプライチェーン構築など、多岐にわたる経営判断に直結します。税制改正2026は、単なる税負担の増減にとどまらず、日本企業の競争環境や経営戦略そのものに影響を与える可能性があります。

本稿では、法人税を中心とした防衛財源、EVシフトと自動車関連企業への影響、賃上げ税制との関係を整理し、企業行動にどのような変化が求められるのかを考察します。

1 防衛財源と法人税:企業負担の見直し

防衛力強化のための財源確保は、企業にとっても重要なテーマです。すでに、法人税については2026年4月から増税が決定しています。

(1)法人税の負担増

防衛財源の一環として、法人税の一定部分に上乗せが行われます。企業の税負担は確実に増加しますが、同時に防衛産業の強化、技術開発、国際供給網の安定化といった政策目的が存在します。

(2)企業への影響は業種によって異なる

・利益率の高い業界ほど負担増の影響が大きい
・輸出産業は為替との兼ね合いで影響が変動
・中小企業については税負担の増加が賃上げ余力に影響

(3)防衛関連産業の投資機会

一方で、防衛産業やサイバーセキュリティ領域では、政策支援により市場拡大が見込まれる可能性があります。企業負担と政策恩恵のどちらが上回るかは、業種ごとに異なります。


2 EVシフトと自動車関連企業への影響

電気自動車(EV)への移行は、日本の製造業全体に大きな影響を与える構造転換です。

(1)自動車メーカーの投資負担

EV化では、以下の領域で莫大な投資が必要になります。

  • バッテリー製造
  • 車載ソフトウェア
  • 自動運転技術
  • 充電インフラ

これらの投資は長期的な競争力を左右し、税制による支援策の有無が企業の判断に影響します。

(2)部品メーカーの構造転換

内燃機関(エンジン)中心の部品メーカーは、需要減に直面します。一方で、

  • モーター部品
  • パワエレ部品
  • センサー
    など、EV向けの新市場が広がります。

税制はこの移行を支援する役割を担います。

(3)道路財源・車体課税の変化が企業に与える影響

重量税や走行税の検討は、物流企業や自動車メーカーにとって重要です。特に、

  • 商用車
  • 大型車両
    は、税制変更がコスト構造に直接影響を与えます。

3 賃上げ税制と企業の人材戦略

政府は「成長と分配の好循環」を掲げ、企業に持続的な賃上げを求めています。税制はその誘導手段として活用されています。

(1)賃上げ税制の基本仕組み

一定割合以上の賃上げを実施した企業に対して、法人税額から控除する制度が存在します。2026年度の改正では要件・控除率の見直しが検討される可能性があります。

(2)賃上げと税負担の関係

防衛財源のための税負担が増える中で、賃上げをどれだけ実行できるかは企業規模によって差が出ることが予想されます。

  • 大企業:賃上げ余力はあるが、投資とのバランスが課題
  • 中小企業:人件費の増加が経営に直結するため慎重になりやすい

(3)税制は賃上げを促すが万能ではない

賃上げ税制は企業の行動を促す仕組みですが、企業の財務余力や業績が伴わなければ、賃上げは広がりません。税制は“きっかけ”ではあっても、“決定要因”ではないという限界があります。


4 企業の投資判断と税制の関係

税制は企業の投資行動に強い影響を与えます。2026年度改正で注目すべきポイントは以下のとおりです。

(1)研究開発税制の見直し

イノベーションや成長産業への投資を促すため、研究開発税制は重要な政策手段です。EV化やAIなど新領域での研究開発投資に対し、税制がどう設計されるかは企業成長に直結します。

(2)設備投資の判断

自動車業界や製造業では、減価償却制度の扱いが投資時期の判断を左右します。税制の変更が設備投資の前倒しや延期を引き起こす可能性があります。

(3)サプライチェーンの再構築

国際情勢の変化により、供給網の見直しが進んでいます。国内投資を促すための税制優遇が拡大する可能性があります。


5 企業経営における三つの重要ポイント

2026年度税制改正の議論から、企業が注視すべきポイントは以下の三点です。

(1)税負担の増加にどう対応するか

法人税上乗せや各種税制変更により、コストが増加する可能性があります。企業は財務戦略の再構築が必要です。

(2)EV化・環境政策との整合性

EV化の流れは不可逆的であり、税制もこれに合わせて変化します。これはビジネスモデルそのものの転換を迫る大きな要因になります。

(3)人材への投資

賃上げ税制を活用し、人材確保とスキル向上に対する投資を競争力強化につなげることが求められます。


6 企業規模ごとの影響整理

ここで企業規模別に2026年度改正がどう影響するかを整理します。

■ 大企業

  • 防衛増税の影響が直接的
  • 賃上げ余力は高いが投資負担も大
  • EV化に向けた研究開発や設備投資が加速

■ 中堅企業

  • 税負担増が財務に与える比重が大きい
  • EVシフトによるビジネスモデル転換が課題
  • 賃上げ税制の恩恵は受けやすいが効果は限定的

■ 中小企業

  • 最も影響が大きい層
  • 防衛増税・最低賃金上昇・社会保険料負担の複合圧力
  • 技術投資・人材育成が遅れれば競争力低下のリスク
  • 一方で、税制による支援が比較的手厚い分野もある

結論

税制改正2026は、企業経営にとって大きな転換点となります。防衛財源による法人税負担の増加、EV化と自動車税制の再編、賃上げ税制との整合性など、企業が直面する論点は多岐にわたります。

税制は単なる負担ではなく、企業の投資・人材戦略・イノベーションを方向づける政策的な力を持っています。企業は、税制を“コスト”としてとらえるだけでなく、“経営の羅針盤”として活用する視点が求められます。

次回(第8回・最終回)は「税制改正2026の本質:持続可能な負担と社会契約」を取り上げ、本シリーズの総まとめを行います。


参考

日本経済新聞など関連資料をもとに再構成。


という事で、今回は以上とさせていただきます。

次回以降も、よろしくお願いします。

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