日本の税制改正は、毎年のように手が加えられています。しかし、その内容を振り返ると、制度全体を見直す大改革よりも、控除の微調整や期限延長、例外規定の追加といった「つぎはぎ」に見える改正が目立ちます。
なぜ税制改正は、毎年このような形になりやすいのでしょうか。本稿では、制度設計と政治過程の両面から、その理由を整理します。
税制改正は「毎年必ず行われる」制度である
日本の税制改正は、必要があるときだけ行われるものではありません。毎年度の予算編成と一体で、必ず実施される制度です。
この仕組みのもとでは、税制を抜本的に変える必要がなくても、「何らかの改正項目」を用意することが前提になります。結果として、制度の根幹には触れず、周辺部分を調整する改正が積み重なりやすくなります。
利害関係者が多すぎる税制という制度
税制は、ほぼすべての国民と企業に影響を及ぼします。
所得税、法人税、消費税、相続税のいずれであっても、必ず「得をする側」と「不利になる側」が生まれます。そのため、抜本改革を行えば、反発の規模も大きくなります。
与党税制調査会の調整過程では、業界団体、関係省庁、与党議員の意見が複雑に絡み合います。その結果、全面的な制度変更よりも、「この部分だけを修正する」「影響を受ける層を限定する」といった妥協の産物が選ばれやすくなります。
財源制約が大胆な改革を阻む
税制改正は、必ず財源とセットで議論されます。
減税を行えば代替財源が必要になり、増税を行えば国民負担への批判が避けられません。とくに少子高齢化が進む中では、社会保障財源との関係が常に問われます。
その結果、「大きく変える」よりも、「微調整で済ませる」方が政治的に安全な選択となり、つぎはぎ的な改正が積み重なります。
政治日程が税制改正を短期志向にする
税制改正の議論は、毎年秋から年末にかけて集中的に行われます。
この限られた期間で、複雑な制度を根本から設計し直すことは困難です。中長期的なビジョンよりも、「来年度に実施できるか」「予算に間に合うか」が優先されます。
また、選挙を意識したタイミングでは、有権者に説明しやすい小規模な改正が選ばれやすくなります。これも、制度全体の再設計が後回しにされる一因です。
「暫定措置」が恒久化する構造
日本の税制には、期限付きで導入された特例措置が数多く存在します。
本来は景気対策や時限的支援として設けられた制度が、期限が来るたびに延長され、結果的に恒久制度のように扱われるケースも少なくありません。
こうした暫定措置の積み重ねが、税制を複雑化させ、「つぎはぎ」の印象を強めています。
結論
税制改正が毎年「つぎはぎ」になるのは、制度の欠陥というよりも、予算編成と政治過程に組み込まれた構造的な帰結です。
抜本改革が求められる場面であっても、短期的な調整が優先される限り、税制は少しずつ修正され続けます。税制改正を読み解く際には、「何が変わったか」だけでなく、「なぜ大きく変わらなかったのか」にも目を向けることが重要です。
参考
・日本経済新聞各紙 税制改正・財政関連記事
という事で、今回は以上とさせていただきます。
次回以降も、よろしくお願いします。
