税制と社会保障は、しばしば別々の制度として語られます。税制は「取る仕組み」、社会保障は「配る仕組み」という整理は分かりやすい一方で、現実の政策運営ではこの二つを切り離して考えることはできません。
本稿では、税制と社会保障がなぜ常に一体で議論されるのか、その構造的な理由を整理します。
税と社会保障は「同じ財布」を使っている
税制と社会保障を切り離せない最大の理由は、財源が共通であることです。
社会保障給付の多くは、税や社会保険料によって賄われています。税を減らせば、社会保障の財源は減り、社会保障を拡充すれば、税や保険料の負担増が避けられません。
制度上は別々に設計されていても、財政という観点では一つの財布を共有している以上、片方だけを独立して動かすことはできません。
社会保険料は「第二の税」として機能している
日本では、社会保障の財源として社会保険料が大きな役割を担っています。
しかし、社会保険料は実質的には強制的に徴収され、使途も公的に決められている点で、税と極めて近い性格を持っています。
税制を語る際に、社会保険料を除外してしまうと、国民負担の全体像を正確に捉えることができません。この点でも、税制と社会保障は不可分の関係にあります。
給付と負担は必ずセットで設計される
社会保障制度は、給付の水準だけで成り立つものではありません。
給付を維持・拡充するためには、必ず負担の裏付けが必要です。逆に、負担を軽くすれば、給付の水準や対象範囲を見直さざるを得なくなります。
このため、税制改正の議論では、社会保障給付の在り方が必ず俎上に載ります。税と社会保障は、給付と負担という一つの設計図の両輪です。
税制が社会保障政策の代替手段になる場面
日本では、社会保障の課題を税制で補完してきた歴史があります。
子育て支援や高齢者支援を、給付ではなく控除や税額控除で対応する例がその代表です。
この手法は、予算措置よりも導入しやすい一方で、制度を複雑化させ、支援の届き方に差を生みやすいという側面があります。それでも税制と社会保障が絡み合うのは、政策運営上の現実的な選択でもあります。
少子高齢化が両者の一体化を加速させる
少子高齢化が進む中で、社会保障給付は増え続けています。
一方で、現役世代の人口は減少し、税や保険料を負担する側の余力は限られています。この構造のもとでは、税制だけ、あるいは社会保障だけを個別に改革することは困難です。
税制と社会保障を一体で見直さなければ、世代間・世代内の不公平が拡大するリスクがあります。
結論
税制と社会保障は、制度上は別々に存在していても、財源、負担、給付という点で強く結びついています。
どちらか一方だけを切り離して議論すれば、全体像を見誤ります。税制改正や社会保障改革を読み解く際には、両者を一体の仕組みとして捉える視点が欠かせません。
参考
・日本経済新聞各紙 税制・社会保障関連記事
という事で、今回は以上とさせていただきます。
次回以降も、よろしくお願いします。
