相続税調査を受けた結果、申告内容の修正が必要になるケースは少なくありません。
調査と聞くと、「すぐに重いペナルティが課されるのではないか」と不安になる方も多いですが、実務では冷静な判断が重要です。
相続税調査後に問われるのは、
・どのように修正申告を行うか
・どの加算税が課されるのか
・どこまで争うべきか
という点です。
本記事では、相続税調査を受けた後の修正申告と加算税の考え方を、実務目線で整理します。
修正申告とは何か
修正申告とは、当初申告した税額が過少であった場合に、その不足分を是正する手続です。
相続税調査では、申告漏れや評価誤りが指摘され、その結果として修正申告を行う流れが一般的です。
重要なのは、修正申告は「罰」ではなく、あくまで税額を正すための手続であるという点です。
問題となるのは、その修正にどのような加算税が伴うかです。
自主的な修正か、指摘後の修正か
修正申告は、大きく次の2つに分かれます。
・調査前に自主的に行う修正申告
・調査で指摘を受けた後に行う修正申告
この違いは、加算税の有無や種類に大きく影響します。
調査で指摘される前に自主的に修正した場合、原則として過少申告加算税は課されません。
一方、調査後の修正申告では、加算税が問題になります。
過少申告加算税の考え方
相続税調査後の修正申告で最も一般的なのが、過少申告加算税です。
税率は原則10%ですが、一定額を超える部分については15%となります。
過少申告加算税は、
「申告はしたが、税額が不足していた」
場合に課されるものです。
評価の見解違いや計算ミスなど、悪意がないケースでも対象になります。
無申告加算税との違い
相続税を申告していなかった場合には、無申告加算税が問題になります。
無申告加算税は、過少申告加算税よりも税率が高く設定されています。
ただし、期限後申告であっても、調査通知前に自主的に申告した場合には、加算税が軽減される場合があります。
「どうせ遅れたから同じ」と考えるのは危険です。
重加算税が問題になるケース
重加算税は、
・財産の隠蔽
・仮装行為
があった場合に課される、最も重い加算税です。
名義預金の意図的な隠しや、虚偽の書類作成などが典型例です。
重加算税が課されると、税率は35%または40%となり、負担は非常に大きくなります。
実務上は、
「重加算税に該当するかどうか」
が調査後の最大の分岐点になります。
「全部認める」か「一部争う」か
調査後の対応で悩ましいのが、指摘事項をどこまで受け入れるかです。
すべてを認めて修正する方法もあれば、
評価や帰属について一部見解を主張するケースもあります。
重要なのは、
・事実関係が明確か
・証拠資料があるか
・争うことで不利にならないか
を冷静に判断することです。
感情的に反論することは、実務上ほとんどメリットがありません。
修正申告時に意識すべきポイント
修正申告を行う際には、次の点を意識する必要があります。
・修正理由を自分でも理解しているか
・説明できない論点が残っていないか
・将来の再調査につながらない内容か
修正申告は「一度きり」で終わらせることが重要です。
場当たり的な修正は、追加指摘を招く可能性があります。
専門家関与の重要性
相続税調査後の対応は、申告時以上に専門的な判断が求められます。
・加算税のリスク評価
・見解の主張可否
・修正範囲の判断
これらを整理せずに進めると、不要な税負担を負う結果になりかねません。
特に重加算税が視野に入る場合は、慎重な対応が不可欠です。
結論
相続税調査を受けた後に重要なのは、「指摘されたから従う」ことではありません。
重要なのは、
・何が問題とされたのか
・どこまで修正すべきか
・どの加算税が想定されるか
を理解したうえで、冷静に判断することです。
相続税調査は、終わり方によって負担が大きく変わります。
修正申告と加算税を正しく理解することが、調査対応の質を左右します。
参考
・税のしるべ「6事務年度の相続税調査状況、追徴税額は12.3%増の962億円」(2025年12月22日)
・国税庁「相続税の調査状況に関する公表資料」
という事で、今回は以上とさせていただきます。
次回以降も、よろしくお願いします。
