特例承継計画の提出期限延長と「その後」をどう読むか――事業承継税制、令和9年度改正が分岐点に

税理士
水色 シンプル イラスト ビジネス 解説 はてなブログアイキャッチのコピー - 1

事業承継税制の特例措置について、令和8年度税制改正大綱で重要な変更が示されました。
それが「特例承継計画」の提出期限の再延長です。
一方で、制度そのものの適用期限は据え置かれ、「期限到来後のあり方は令和9年度改正で結論を得る」と明記されました。

この一文は、事業承継税制が今後どうなるのかを考えるうえで、非常に重い意味を持っています。
本稿では、今回の期限延長の内容を整理したうえで、「なぜ今なのか」「実務上どう判断すべきか」を冷静に考えていきます。


1.今回の改正内容を整理する

まず、令和8年度改正で示された内容を簡潔に整理します。

法人版事業承継税制

  • 特例承継計画の提出期限
     令和8年3月末 → 令和9年9月末(1年6か月延長)
  • 特例の適用期限
     令和9年12月末(変更なし)

個人版事業承継税制

  • 個人事業承継計画の提出期限
     令和8年3月末 → 令和10年9月末(2年6か月延長)
  • 特例の適用期限
     令和10年12月末(変更なし)

今回見直されたのは「計画の提出期限」のみであり、制度そのものの期限は維持されています。


2.特例承継計画は「3度目の延長」

特例承継計画の提出期限は、これまでにも繰り返し延長されてきました。

  • 令和4年度改正:1年延長
  • 令和6年度改正:2年延長
  • 令和8年度改正:さらに延長(今回)

つまり、今回が3度目の延長です。

注目すべきは、今回の延長により「特例の適用期限の直前(約3か月前)まで計画提出が可能になる」という点です。
これ以上提出期限を延ばす場合、制度の適用期限そのものを見直さなければ整合性が取れなくなります。


3.「今後とも延長しない」という文言が消えた意味

過去の与党税制改正大綱では、事業承継税制の特例について
「今後とも適用期限は延長しない」
という趣旨の文言が明記されてきました。

しかし、令和8年度与党大綱では、この直接的な表現が姿を消しています。
代わりに盛り込まれたのが、次の方針です。

  • 世代交代の停滞や地域経済への影響
  • 制度の適用状況
  • 課税の公平性

これらを踏まえ、令和9年度税制改正で結論を得る

この書きぶりは、「延長しない」と断言する段階をすでに過ぎ、制度の出口戦略を含めて再検討する局面に入ったことを示しています。


4.結論が示されるのは「今年12月中旬」の可能性

与党税制改正大綱は、例年12月中旬ごろに公表されます。
「令和9年度改正で結論を得る」と明記された以上、今年12月中旬ごろには、特例措置終了後の方向性が示される可能性が高いと考えられます。

このタイミングは実務上、非常に重要です。

  • 特例承継計画の提出期限:令和9年9月末
  • 特例の適用期限:令和9年12月末

つまり、計画提出後、実際に特例を使うかどうかを判断する直前の段階で、制度の将来像が見える構造になっています。


5.「とりあえず計画提出」は合理的か

今回の延長により、次の選択肢が現実的になりました。

  • いま特例を使うかどうか決めきれなくても
  • とりあえず特例承継計画だけは提出しておき
  • 今年12月の大綱を見てから最終判断する

この判断は、制度設計上も十分に合理性があります。
特例承継計画の提出は、即時の課税効果を生むものではありません。
「将来の選択肢を確保する行為」と位置づけることができます。

一方で、計画提出には一定の準備と覚悟も必要です。
「出せば安心」ではなく、「出した後どうするか」まで見据えた判断が求められます。


結論

今回の提出期限延長は、単なる猶予措置ではありません。
事業承継税制が恒久制度へ移行するのか、役割を終えるのか、その分岐点が近づいていることを示しています。

令和9年度税制改正は、事業承継税制にとって事実上の「出口戦略」を示す改正になる可能性があります。
その結論を見極めたうえで最終判断ができるよう、今の段階では「選択肢を残す行動」が重要です。

制度が続くかどうかではなく、
制度がどう変わるかを見据えて動く
それが、これからの事業承継実務に求められる姿勢ではないでしょうか。


参考

  • 税のしるべ 2026年1月26日
     特例承継計画の提出期限を9年9月末まで延長へ、特例の期限到来後のあり方は9年度改正で結論

という事で、今回は以上とさせていただきます。

次回以降も、よろしくお願いします。

タイトルとURLをコピーしました