消費税減税を巡る議論では、常に「財源をどうするのか」が最大の論点になります。
近年、その候補としてたびたび浮上するのが、日本銀行が保有する上場投資信託(ETF)です。
時価約95兆円、含み益も巨額と聞けば、減税の原資に使えそうだと感じるのも無理はありません。
しかし、この発想は本当に妥当なのでしょうか。
本稿では、日銀ETFを消費税減税の財源とする考え方を、冷静に検証します。
消費税減税に求められる財源の性質
まず前提として、消費税減税の財源には一定の条件があります。
消費税は、
・国と地方の基幹税
・年金、医療、介護、子育てといった社会保障財源
として恒常的に使われています。
したがって、減税を行うのであれば、
・継続性がある
・景気変動に左右されにくい
・将来世代に過度な負担を残さない
財源が求められます。
一時的に確保できる資金や、性格が不安定な収入は、本来相性が良いとは言えません。
日銀ETFは「恒常財源」になり得るのか
日銀ETFは、
・市場環境によって価値が変動する
・分配金収入も相場次第
という性質を持っています。
仮にETFを売却して現金化したとしても、それは一度きりの収入です。
消費税減税が恒久措置であれば、翌年以降の財源は再び不足します。
また、分配金収入を財源に充てる案もありますが、これは金融市場の状況に大きく左右されます。
安定的な社会保障財源としては、極めて不向きです。
中央銀行資産を財政目的に使う問題点
日銀ETFは、金融緩和という政策目的のために保有されてきた資産です。
これを財政目的で活用することは、中央銀行の独立性を揺るがします。
もし、
「財源が足りないから日銀資産を使おう」
という発想が常態化すれば、将来も同様の圧力がかかることになります。
市場は、
・金融政策が政治に左右される
・日銀が財政の穴埋め役になる
と受け取る可能性があり、円の信認低下や市場の不安定化を招きかねません。
「埋蔵金」論が抱える錯覚
日銀ETFは、国が自由に使える現金ではありません。
帳簿上は含み益があっても、売却すれば市場に影響が出ますし、日銀の財務構造も変わります。
また、ETFの分配金は、
・日銀の剰余金
・国庫納付金
という形で既に政府財源の一部になっています。
これを別枠で「新たな財源」として数えるのは、二重計上に近い発想とも言えます。
本来議論すべき財源論
消費税減税を本気で議論するのであれば、
・社会保障制度の見直し
・給付と負担の再設計
・他税目との組み合わせ
といった、正面からの議論が不可欠です。
「使えそうな資産があるから減税できる」という逆算型の発想は、財政運営として健全とは言えません。
結論
日銀ETFは、規模の大きさゆえに魅力的な「財源候補」に見えます。
しかし、その性質は消費税減税の財源とは根本的に合致していません。
一時的で不安定な資産を恒常的な税収の代わりに使うことは、
・財政の持続性
・金融政策の独立性
・市場の信認
いずれの面から見てもリスクが高いと言えます。
消費税減税の是非を問うのであれば、まず問うべきは「本当に持続可能な財源とは何か」です。
日銀ETFは、その問いへの安易な答えにはなりません。
参考
・日本経済新聞
「難路の日銀ETF売却」関連解説記事
という事で、今回は以上とさせていただきます。
次回以降も、よろしくお願いします。

