法人税で「修正申告を勧められた」ときの考え方― その場で決めてはいけない理由 ―

税理士
水色 シンプル イラスト ビジネス 解説 はてなブログアイキャッチのコピー - 1

法人税の簡易な接触や調査の過程で、
「この点については修正申告をお願いします」
と税務署から勧められることがあります。

この言葉を聞くと、多くの法人は
「従わなければいけないのではないか」
「争うと調査が長引くのではないか」
と不安になります。

しかし、修正申告は義務ではありません
重要なのは、勧められた瞬間に判断しないことです。


修正申告とは何か

修正申告は、納税者が自ら申告内容の誤りを認め、申告をやり直す手続です。
国税庁が一方的に強制するものではなく、あくまで納税者の意思に基づく行為です。

つまり、

  • 勧められた=必ず応じる
    ではありません。

ただし、応じるかどうかで、その後の展開は大きく変わります。


税務署が修正申告を勧める理由

税務署が修正申告を勧める背景には、次の事情があります。

  • 調査結果として否認の見込みが高い
  • 争点として整理しやすい
  • 納税者が自主的に是正した形を取りたい

修正申告は、税務署側にとっても

  • 事務処理が早い
  • 争いを避けられる

というメリットがあります。

そのため、「勧められた=完全に黒」と即断する必要はありません。


その場で「分かりました」と言ってはいけない理由

調査の場で最も避けるべきなのが、
「分かりました。修正します」
と即答することです。

理由は3つあります。

1つ目は、他の年度・他の論点に影響が及ぶ可能性です。
一度誤りを認めると、過年度や別の取引も同様に否認される可能性があります。

2つ目は、重加算税リスクの判断が含まれていないことです。
安易な修正が、不正認定につながるケースもあります。

3つ目は、交渉の余地を自ら放棄することになる点です。


修正申告を検討すべきケース

実務上、修正申告を前向きに検討すべきなのは、次のような場合です。

  • 事実関係に争いがない
  • 証拠が不足しており説明が難しい
  • 否認された場合の影響が限定的
  • 簡易な接触の段階で指摘されている

この場合、早期に修正申告を行うことで、

  • 加算税の軽減
  • 実地調査への発展回避

といった効果が期待できます。


慎重に判断すべきケース

一方、次のような場合は慎重な判断が必要です。

  • 事実認定に争いがある
  • 法令解釈の問題が中心
  • 金額が大きく、影響範囲が広い
  • 同様の処理を継続している

このようなケースでは、
「修正するか・しないか」
だけでなく、
どこまで認め、どこから争うか
という視点が重要になります。


修正申告をしないという選択肢

修正申告を行わない場合、
税務署は

  • 更正処分
  • 不服申立て

という次のステージに進む可能性があります。

これは決して「対立」ではありません。
制度として用意されている正当な手続です。

重要なのは、

  • 感情で拒否しない
  • 根拠なく拒否しない

という点です。


実務で意識すべき判断軸

修正申告を判断する際は、次の軸で整理すると冷静に判断できます。

  • 勝てるかどうか
  • 費用と時間はどれくらいか
  • 他の論点への波及はあるか
  • 将来の処理をどう変えるか

「正しいかどうか」だけでなく、
経営判断として合理的かどうか
という視点が不可欠です。


結論

法人税で修正申告を勧められたとき、
最も重要なのは、
その場で決めないことです。

修正申告は、

  • 逃げでも
  • 敗北宣言でも

ありません。

一方で、
安易な修正は、
不要なリスクを広げることもあります。

AI時代の税務調査では、
「早く判断する」よりも、
「正しく判断する」ことが求められています。

修正申告は、
納税者が選ぶ手続です。
だからこそ、冷静に、戦略的に判断する必要があります。


参考

・税のしるべ「6事務年度法人税等の調査事績、追徴税額が6.6%増の3407億円で過去最高に」(2025年12月8日)
・国税庁「令和6事務年度における法人税等の調査事績」


という事で、今回は以上とさせていただきます。

次回以降も、よろしくお願いします。

タイトルとURLをコピーしました