米国株は2025年に歴史的な強さを見せました。背景にあるのはAI(人工知能)関連企業を中心とした投資熱、金利低下期待、そして米トランプ政権の政策による景気刺激です。
主要な欧米金融機関は、2026年も米国株が堅調に推移すると見込んでいますが、雇用悪化リスクなど、いくつかの警戒要因も浮上しています。
本稿では、来年の米国株相場を取り巻く環境を整理し、投資家は何に注目すべきかをまとめます。
1. S&P500は“1割上昇”がコンセンサス
欧米の大手金融機関6社は、2026年のS&P500を 7100〜8000ポイント と予想しています。
中央値は足元から約1割高の水準で、依然として強気な見方が主流です。
特にドイツ銀行は 8000ポイント を予想。AI関連設備投資の広がりを強調し、「市場心理の主導役はAIが握り続ける」としています。
さらに、2025年に不透明感を広げた貿易政策への懸念が後退している点も強気予想の根拠となっています。
2. AI投資ブームは2026年も継続へ
モルガン・スタンレー、HSBCなどは軒並み「AIが相場をけん引する」という見通しを崩していません。
- マグニフィセント7の高収益が続く
- AI向け設備投資が公益など他業種にも波及
- S&P500銘柄の2026年EPSは12%増(HSBC予想)
特に注目されるのは、AI投資の“波及効果”です。半導体やクラウド関連企業だけでなく、電力、通信、物流など、インフラ産業まで恩恵が広がるという見方が出ています。
3. 金利低下と金融緩和が株価を後押し
米連邦準備理事会(FRB)は2026年にかけて利下げと量的引き締め(QT)の終了を進めると想定されています。
- 利下げ → 企業収益の改善
- QT終了 → 資金供給の増加
- 金利低下 → 設備投資が加速しやすい環境に
モルガン・スタンレーは「市場の想像を超えるハト派政策があり得る」と言及。金利面からみても上昇余地があると評価されています。
4. トランプ政権の政策は“追い風”
OBBB法に代表される政策は、減税と歳出拡大を合わせ持つ構造で、企業の生産性向上や成長率アップにつながるという評価が目立ちます。
また、2025年は貿易政策の影響で自動車・耐久財が打撃を受けましたが、HSBCは「2026年は利益回復が大幅に進む」とみています。
5. 一方で投資家心理は“やや慎重”
強気予想が並ぶ一方で、機関投資家の見方はやや変化しています。
ゴールドマン・サックスの調査では、
S&P500の想定レンジは7000〜7500が最多。
1カ月前よりも保守的なレンジを示す投資家が増えています。
背景にあるのは 労働市場の軟化懸念 です。
- 失業率が急上昇 → 消費低迷
- 企業が人員削減 → 景気後退
- 雇用悪化 → リセッションの引き金となる可能性
BofAは「雇用が悪化すれば、消費低下と人員削減の負のループでリセッション入りする可能性がある」と強い警戒感を示しています。
6. 中間選挙イヤーの“政治イベントリスク”
2026年は米中間選挙が控えています。
トランプ政権は就任後、政策面で市場に揺さぶりをかける場面が多く、選挙を前に追加政策が打ち出される可能性も指摘されています。
- 追加刺激策 → 株価押し上げ要因
- 相互関税の再燃や通商政策転換 → 株価急落リスク
2025年4月の相互関税発表後に急落局面があったように、政策イベントは今後も変動要因になり得ます。
結論
2026年の米国株の見通しは、AI投資の拡大、金利低下、トランプ政権の政策といった追い風が強く、全体として 「上昇基調が続く」 と予想されています。
一方で、雇用悪化リスクや政策イベントによる変動性の高まりなど、慎重姿勢が求められる局面も想定されます。
投資家としては、
- AI関連の恩恵が波及する業種への注目
- 金利動向とFRBの政策のチェック
- 雇用指標の悪化サイン
- 中間選挙に向けた政策ニュース
といった視点で相場をフォローしていくことが重要になります。
「強気相場だが、変動も大きい」。
2026年の米国株は、この二面性を前提にした戦略が求められる一年になりそうです。
参考
- 日本経済新聞「来年の米国株、強気続く AI・金利低下追い風」(2025年12月11日)
(本文中の内容は記事を直接引用せず、論点を再構成しています)
という事で、今回は以上とさせていただきます。
次回以降も、よろしくお願いします。
