令和8年度税制改正では、租税特別措置の廃止が3項目、縮減を伴う見直しが18項目と、例年に比べて踏み込んだ整理が行われました。
今回の改正は、個別制度の是非を超えて、租税特別措置そのものに対する評価軸が明確になりつつあることを示しています。
今後の税制改正において重要になるのは、「どの制度が残るか」ではなく、「どのような制度が残りにくいのか」を見極める視点です。
本稿では、今回の改正内容を手がかりに、廃止・縮減されやすい租税特別措置に共通する特徴を整理します。
政策目的と実態の乖離が大きい
租税特別措置は、特定の政策目的を達成するために設けられます。
しかし、実際の利用状況が当初の政策目的と大きく乖離している場合、その制度は見直しの対象になりやすくなります。
教育資金一括贈与の非課税措置はその典型例です。
教育支援を名目としながら、実態としては相続税対策として利用されるケースが多いことが、かねてから指摘されてきました。
制度の「名称」ではなく「使われ方」が評価される段階に入ったことを示しています。
効果測定が困難、または効果が示せない
今回の改正では、適用実績や政策効果をデータで説明できない制度に対する厳しい姿勢が目立ちます。
地方拠点強化税制における雇用促進税制の廃止も、こうした流れの中で理解できます。
税額控除によって雇用がどれだけ増えたのか、税収減に見合う効果があったのかを定量的に示せない制度は、今後ますます存続が難しくなると考えられます。
特定の層・規模にのみ恩恵が集中している
租税特別措置が、結果として一部の企業規模や特定の資産保有層に偏って利用されている場合、公平性の観点から問題視されやすくなります。
賃上げ促進税制において、大企業向け措置が期限前に廃止された点は象徴的です。
賃上げという行為自体が、税制による後押しがなくても実行可能な企業にまで広く適用されていた点が、制度存続の説得力を弱めたと考えられます。
「期限付き」のはずが長期固定化している
租税特別措置は、本来は期限付きの時限措置として設計されるものです。
しかし、延長を繰り返すことで事実上の恒久制度となっているケースも少なくありません。
令和8年度税制改正大綱では、長期にわたり固定化していないかという点が、創設・拡充時の厳格な検討項目として明示されました。
これは、単に期限が設定されているかではなく、実質的に「終わる仕組み」になっているかが問われることを意味します。
制度の透明性が低い
今後の大きな転換点として注目されるのが、租税特別措置の適用企業名の公表に関する検討です。
制度を利用しているのが誰なのかが見えにくい状態は、国民的な理解を得にくく、制度維持の正当性を弱めます。
透明性の低い制度ほど、「なぜ残すのか」という説明が困難になり、結果として見直しの対象になりやすくなります。
代替手段が存在する
税制以外の政策手段で代替可能な場合も、租税特別措置は縮減・廃止されやすくなります。
補助金や直接給付、規制改革など、より的確に政策目的を達成できる手段がある場合、税制による優遇の必要性は相対的に低下します。
税制は万能ではなく、最適な政策手段であるかどうかが、今後はより厳しく問われることになります。
結論
令和8年度税制改正から見えてくるのは、租税特別措置が「あること自体」を前提としない時代への移行です。
政策目的との乖離、効果の不透明さ、公平性の欠如、長期固定化といった要素を抱える制度は、今後も廃止・縮減の対象となる可能性が高いでしょう。
企業や個人にとって重要なのは、制度の存続を前提にした中長期計画を立てないことです。
租税特別措置は「使えたらラッキーな例外」であり、「将来も続く前提の権利」ではないという認識が、これからの実務では不可欠になります。
税制は静的な仕組みではなく、常に検証され、更新されるものです。
今回の改正は、その現実を改めて突きつけるものといえるでしょう。
参考
・税のしるべ「租税特別措置・補助金見直し担当室が8年度改正の結果を公表」(2026年1月19日)
・令和8年度税制改正大綱
という事で、今回は以上とさせていただきます。
次回以降も、よろしくお願いします。
