家計支援を前面に出した2026年度税制改正大綱をどう読むか

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2026年度の与党税制改正大綱が決定されました。今回の大綱は、全体を通じて「家計支援」を前面に押し出した内容となっています。所得税の年収の壁の引き上げ、住宅ローン減税の拡充、NISAの対象拡大など、生活に直結する項目が数多く盛り込まれました。
一方で、財源問題や制度の持続可能性といった論点は、やや後景に退いている印象もあります。
本稿では、今回の税制改正大綱のうち、特に家計への影響が大きいポイントを整理し、その意味合いを考えていきます。

年収の壁はなぜ178万円なのか

今回の大綱で最も注目を集めたのが、所得税の課税最低限、いわゆる「年収の壁」の引き上げです。
所得税がかかり始める水準は、基礎控除と給与所得控除の下限を合算した金額で決まります。現行制度では、年収200万円以下の層について、この合計額が160万円となっていました。
これを178万円に引き上げることで、低所得層を中心に実質的な減税となります。また、最大の基礎控除額を適用できる年収の上限も、665万円まで広げられました。
物価上昇が続く中で、名目賃金の上昇がそのまま税負担増につながる「ステルス増税」を和らげる狙いがあると考えられます。一方で、壁を動かすたびに制度が複雑化していくという問題は、引き続き残ります。

住宅ローン減税は中古住宅重視へ転換

住宅ローン減税については、大きな方向転換が見られました。
これまで手厚かった新築住宅に比べ、中古住宅は減税期間や限度額で不利な扱いを受けてきましたが、今回の改正でその差が解消されます。
減税対象となるローン残高の上限は最大4,500万円に引き上げられ、適用期間も13年に延長されました。新築・中古の区別はなくなります。
背景には、新築住宅価格の高騰と、中古住宅の流通促進という政策的意図があります。住宅取得を巡る支援は「量」から「選択肢の多様化」へ軸足を移しつつあると言えるでしょう。

NISAは子ども世代まで広がる

資産形成分野では、NISAの拡充が盛り込まれました。
つみたて投資枠について、18歳未満の利用を認め、年間60万円、総額600万円まで積み立て可能とする方向です。
積み立てた資産は原則として12歳以上にならないと引き出せない仕組みとされ、教育資金などへの活用を想定しています。
親世代の裁量による取り崩しを防ぐ設計となっており、単なる節税制度ではなく、世代をまたぐ資産形成のツールとして位置付け直そうとする意図がうかがえます。

エコカー減税とEV課税のちぐはぐさ

自動車関連税制では、エコカー減税を2年間延長する一方で、2028年5月からEVに対して新たな重量課税を導入する方針が示されました。
道路維持の財源確保という合理性はあるものの、脱炭素政策との整合性には疑問も残ります。
補助金と課税を同時に行う構造は、家計にとって分かりにくく、将来の負担見通しを立てにくくする要因にもなります。

「減税前面」の裏にあるもの

今回の税制改正大綱は、減税メニューが目立つ一方で、その財源や将来像についての説明は限定的です。
家計支援は重要ですが、社会保障費が膨らみ続ける中で、税と負担のバランスをどう取るのかという議論は避けて通れません。
毎年の税制改正が「つぎはぎ」になりやすい背景には、選挙と財政、社会保障が複雑に絡み合う日本の制度構造があります。今回の大綱も、その延長線上にあると見ることができます。

結論

2026年度税制改正大綱は、家計支援を強く意識した内容となりました。
年収の壁、住宅ローン減税、NISAといった制度は、多くの人にとって直接的な影響があります。一方で、制度の複雑化や将来世代への負担の先送りといった課題も同時に抱えています。
税制改正を「得か損か」だけで捉えるのではなく、その背景や方向性を理解することが、これからの生活設計や資産形成を考えるうえで重要になってきます。

参考

・日本経済新聞「家計支援へ減税前面 与党税制大綱、決定へ」(2025年12月19日夕刊)

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という事で、今回は以上とさせていただきます。

次回以降も、よろしくお願いします。

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