これまでのシリーズで、実家が空き家になったときの3つの選択肢――
- 売却して現金化
- 生前に相続人へ名義を移す
- 相続まで親名義で保有する
――についてメリット・デメリットを整理してきました。
最終回では、どの家庭にとっても大切になる「判断の軸」と「家族の話し合いのすすめ方」について考えてみましょう。
判断の3つの軸
1. 資金計画の視点
まず考えるべきは、親の介護費用をどう賄うかです。
- 預貯金や年金で十分に足りるのか
- 不足分を不動産売却で補う必要があるのか
資金計画を明確にすることで、「売却すべきか」「保有してよいか」が見えてきます。
2. 税務の影響
次に重要なのが、税金のシミュレーションです。
- 売却時には譲渡所得税と特例(3,000万円控除)の有無
- 贈与時には贈与税・登録免許税・不動産取得税の負担
- 相続時には相続税の試算と、小規模宅地等の特例の適用可否
「どの方法が一番税負担が軽くなるか」を冷静に確認することが欠かせません。
3. 家族の意向と心理的側面
最後に、家族が実家をどう位置づけるかです。
- 「思い出の場所だから残したい」
- 「資産として割り切りたい」
- 「将来子や孫が使う可能性があるか」
複数の相続人がいる場合は、早めに意見をすり合わせておくことがトラブル回避につながります。
放置が一番のリスク
実家の空き家問題で最も避けたいのは「何も決めずに放置する」ことです。
放置すれば、
- 固定資産税や維持費がかかり続ける
- 老朽化や防犯上のリスクが高まる
- 「特定空き家」に指定され税負担が増える可能性もある
- 相続が発生してから家族が揉める
というリスクが積み重なります。
家族会議のすすめ
空き家問題は、感情面と経済面が複雑に絡み合うテーマです。だからこそ、親が元気なうちに家族で話し合うことが大切です。
話し合う際のポイントは以下の通りです。
- 親の介護・生活資金の見通しを共有する
- 実家を「残す/売る/貸す」の方向性を確認する
- 税金の試算は専門家(税理士やFP)に依頼する
- 意見が割れた場合は「一度現金化して平等に分ける」など落とし所を探る
まとめ:わが家にとっての最適解を導く
「売却」「生前贈与」「相続まで保有」――どれが正解というものはなく、家庭ごとに最適解は異なります。
大切なのは、資金計画・税務・家族の意向という3つの軸で冷静に判断すること。
そして何より、放置せずに早めに方向性を決めることが、将来のトラブルや負担を減らす最大のポイントです。
親子・きょうだいで率直に話し合い、必要なら税理士や専門家の助言も受けながら、安心できる答えを導いていきましょう。
📖 参考:
「実家が空き家になったら… 売却して現金化?相続まで親名義?」日本経済新聞(2025年9月1日付)
という事で、今回は以上とさせていただきます。
次回以降も、よろしくお願いします。
