外為特会は「打ち出の小づち」なのか― 円安発言と財源論の落とし穴 ―

政策

衆院選を巡る議論の中で、外国為替資金特別会計、いわゆる外為特会が注目を集めています。
高市首相が円安の利点として外為特会の運用益に言及したことで、「外為特会は使える財源なのか」という論点が改めて浮上しました。

一方で、同時期に為替市場では円安が再び進行し、首相発言が市場に与えた影響も指摘されています。
本稿では、外為特会の仕組みを整理したうえで、「頼れる財源」としての現実性と、その副作用について考えてみます。

外為特会とは何か

外為特会は、為替介入を行うために設けられた特別会計です。
政府が円高局面で円を売ってドルを買い、外貨準備として保有した資産を管理しています。

保有する外貨は主に米国債などで運用され、
・外貨資産から得られる利子収入
・政府短期証券の利払い費
との差額が損益として計上されます。

日本の金利が海外より低い状態が続く中、金利差による利益が生じやすく、
さらに円安が進むと、外貨建て利子収入を円換算した際の金額が膨らみます。

剰余金はすでに使われている

外為特会で生じた利益は「剰余金」として整理され、現行制度では原則としてその7割までを一般会計に繰り入れることができます。

実際、
・2024年度には過去最高水準となる約5.3兆円の剰余金が発生
・2025年度予算では約3.2兆円が一般会計に繰り入れ
・その一部は防衛費の財源にも充てられました

つまり、外為特会の利益はすでに財政運営に組み込まれており、
「新たな打ち出の小づち」が眠っているわけではありません。

含み益を財源にする難しさ

円安が進む中で、外貨建て資産の含み益を活用すべきだという議論もあります。
しかし、ここには大きな制約があります。

外貨資産を売却して円に換えれば、それは実質的に円買い・ドル売りとなり、
市場では為替介入と受け止められます。

為替介入は、投機的な動きへの対応として限定的に国際社会から認められているものです。
財源確保を目的とした恒常的な資産売却は、
・国際的な理解を得にくい
・将来の介入余力を低下させる
といった問題をはらみます。

首相発言と市場の反応

今回の問題をより複雑にしたのが、首相の発言と市場の受け止め方です。

円安のメリットとして外為特会の運用益に言及した発言は、
「政府が円安を容認している」と市場に受け取られました。

その結果、
・円安是正に向けた日米協調への疑念
・投機筋による円売り再燃
を招き、レートチェックによる円高効果の一部が短期間で失われました。

政策の意図と市場の解釈が食い違うと、
財政論だけでなく為替政策そのものの信認にも影響を及ぼします。

野党の財源論に潜む共通の課題

外為特会は、与党だけでなく野党の政策でも財源候補として挙げられています。
年金積立金や中央銀行の保有資産と並び、「眠れる資産」として語られがちです。

しかし共通する問題は、
・本来の制度目的を離れていないか
・一時的な財源に過度な期待をしていないか
という点です。

資産の取り崩しは、将来の政策対応力を削ることと表裏一体です。

結論

外為特会は確かに運用益を生む仕組みを持ち、
剰余金はすでに財政の一部を支えています。

しかし、
・新たな恒久財源として使える余地は限定的
・含み益の活用は為替介入と不可分
・政治的メッセージが市場を動かすリスクが大きい

という現実を直視する必要があります。

外為特会は「頼れる財源」というより、
為替政策と財政運営の微妙なバランスの上に成り立つ、
慎重に扱うべき装置だと言えるでしょう。

参考

・日本経済新聞
 外為特会、頼れる財源? 首相「運用に円安の恩恵」
・日本経済新聞
 円に売り、一時1ドル155円台 レートチェックの効果半減


という事で、今回は以上とさせていただきます。

次回以降も、よろしくお願いします。

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