加給年金は年金版の「家族手当」―2028年からの改正内容と注意点

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会社員や公務員として長く働いてきた人にとって、65歳から支給される老齢厚生年金は老後生活の柱となります。その中で「加給年金」という制度をご存じでしょうか。
これは、年下の配偶者や子どもを扶養している場合に年金額が上乗せされる仕組みで、「年金の家族手当」とも呼ばれています。特に“年の差夫婦”にとってはありがたい制度ですが、2025年6月に成立した「年金制度改正法」によって、2028年4月から支給額が見直されることになりました。

本記事では、現行制度の仕組みと加算額、改正後の変更点、そして注意すべきポイントについて整理していきます。


現行制度:対象者と要件

まずは現行の仕組みを振り返りましょう。加給年金の対象となるのは、原則65歳に到達した時点で以下の条件を満たす場合です。

  1. 厚生年金の被保険者期間が20年以上ある
  2. 65歳未満の配偶者、または条件を満たす子どもがいる
  3. 生計維持関係が認められる(同居が原則だが、別居でも仕送りなどがあれば対象)
  4. 配偶者や子どもの前年収入が850万円未満(所得655.5万円未満)
  5. 配偶者の厚生年金加入期間が20年未満

さらに、事実婚関係や一時的に収入要件を超えた場合でも、条件を満たせば対象となります。


加算額と「特別加算」

現行制度での支給額は以下の通りです(2025年度価格)。

  • 配偶者:年23万9,300円
  • 子ども(1人目・2人目):年23万9,300円
  • 子ども(3人目以降):年7万9,800円

加えて、配偶者への加給年金には「特別加算」があり、生年月日によって段階的に金額が決まっています。例えば、1943年4月2日以降生まれの人であれば年17万6,600円が上乗せされ、合計41万5,900円が加算されます。

なお、配偶者が65歳になると加給年金は支給停止となり、その後は「振替加算」が配偶者の基礎年金に付く場合があります。ただし、振替加算は生年月日が1966年4月1日以前の世代に限定され、若い世代ではすでに廃止の方向です。


改正のポイント(2028年4月から)

2028年4月以降、加給年金は次のように見直されます。

  • 配偶者への加算額を縮小
    現行最大41万5,900円 → 37万4,200円(2025年度価格で換算)。段階的に縮小予定。
  • 子どもへの加算額を拡充
    これまで第3子以降は7万9,800円だったが、すべての子どもで一律28万7,100円(2025年度価格)。
  • 対象範囲の拡大
    老齢基礎年金、障害厚生年金、遺族厚生年金の受給者にも子ども加算が適用可能に。

ただし、基礎年金と厚生年金の両方で加算要件を満たす場合は厚生年金を優先し、重複して受け取ることはできません。さらに、子どもが国内居住であることも条件に加わります。


支給停止のタイミングと注意点

加給年金は知らないうちに支給が止まってしまうことがあるため注意が必要です。代表的な支給停止のケースは以下の通りです。

  • 配偶者が65歳に到達したとき
  • 子どもが18歳到達年度末を迎えたとき
  • 生計維持の条件を満たさなくなったとき(離婚・死別・別居など)
  • 配偶者が老齢厚生年金や退職共済年金を受給する権利を持つとき(2022年改正以降)

特に、配偶者の死亡や離婚の際は届け出を怠ると、過払いとなり返還を求められるリスクがあります。


繰り下げ受給との関係

老齢年金を繰り下げる場合、加給年金や振替加算は増額の対象になりません。さらに、繰り下げ受給を選んで年金を受け取らない期間中は、加給年金そのものが支給されない点も見落としがちです。


まとめ:制度の知識が“損得”を分ける

加給年金は、条件を満たせば年間数十万円単位で受け取れる大きな加算制度です。
しかし、制度の存在があまり知られていないことや、支給停止のタイミングに気付かないことで、「なぜ年金額が減ったのか分からない」と相談に来られるケースも少なくありません。

2028年からは配偶者加算が縮小される一方、子ども加算は充実するなど、制度の方向性も変わりつつあります。対象となるかどうかを事前に確認し、ライフプランや受給方法の選択に反映させることが大切です。


参考文献

という事で、今回は以上とさせていただきます。

次回以降も、よろしくお願いします。

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