出国税が2026年7月に引き上げへ 1人1000円→3000円の背景と今後の論点

税理士
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海外旅行や出張のたびに支払う「国際観光旅客税(出国税)」が、2026年7月から引き上げられる方向となりました。現行の1人1000円が3000円へと3倍になる大きな改定です。税収は観光地の混雑対策や地方へのインバウンド誘致などに使われる予定ですが、海外渡航者にとっては新たな負担増となります。

今回の記事では、出国税引き上げの背景、政府の狙い、家計や観光産業への影響を整理しながら、制度改正の位置づけを考察します。

出国税とは何か

国際観光旅客税は、2019年に導入された比較的新しい国税で、出国するすべての旅行者から一律1000円を徴収しています。航空券代に上乗せされる仕組みで、国籍を問わず徴収される点が特徴です。

導入目的は、訪日外国人の急増によって生じた観光インフラの不足や混雑対応、観光品質向上のための財源確保でした。

引き上げの時期と内容

政府・与党案では、2026年7月に出国税を1000円→3000円へ引き上げる方針が示されています。
同時に、ビジネスクラス以上の座席利用者を5000円に引き上げる案もありましたが、これは今回の改正には盛り込まれず、今後の検討事項となりました。

負担が一律3倍になるため、家族旅行などでは影響が大きくなります。

使途は「観光地の混雑緩和」「地方への誘客」「パスポート費用の引き下げ」など

税収の使い道として示されているのは以下の内容です。

  • 観光地の混雑対策(京都・鎌倉などオーバーツーリズム対策)
  • 地方へのインバウンド誘致強化
  • パスポート取得費用の引き下げ
  • 受け入れ環境整備(多言語案内・交通アクセスなど)

特に「オーバーツーリズム」への対応は喫緊の課題であり、観光の質の改善と地域負担の軽減につなげる狙いがあります。

家計への影響 ― 負担増の実感

3000円という金額は、旅行全体の費用としては小さいものの、複数人での旅行では負担が積み上がります。

例)

  • 4人家族で海外旅行 → 1000円×4=4000円 → 3000円×4=1万2000円
    出国税だけで8000円の増加となります。

また、LCCなどで旅費を抑える層にとっては相対的な負担感が大きくなり、需要を冷やす可能性も否定できません。

観光業界への影響と今後の論点

出国税の引き上げは、訪日外国人への影響は小さい一方、日本人の海外旅行需要には抑制的に働く可能性があります。コロナ禍からの回復がようやく進んできた段階での増税であり、旅行業界から慎重論が出る可能性もあります。

また、税収の使途がどれだけ透明性を持ち、観光の質向上につながるかが重要です。
特に地方観光の強化は政策上の優先順位が高く、地域経済振興との関係で注目されます。


結論

出国税の増額は、観光立国としての日本の持続性を高めるための財源確保という位置づけですが、海外旅行者にとっては負担増となり、需要への影響も生じ得ます。今後は、増税分がどれほど有効に活用され、混雑緩和や地方振興に結びつくかが問われることになります。

また、観光政策全体の中で、都市部への集中をどのように是正し、地方とのバランスを取るのかという視点も重要です。出国税の引き上げは単なる財源確保ではなく、日本の観光の未来像をどう描くかという大きな議論の一部として理解する必要があります。


参考

  • 日本経済新聞「出国税引き上げ、来年7月に開始」2025年12月12日

という事で、今回は以上とさせていただきます。

次回以降も、よろしくお願いします。

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