住宅ローン減税5年延長の狙いと今後の住まい選び

FP
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政府が住宅ローン減税を5年間延長し、床面積要件の緩和や中古住宅への支援拡充を進める方向で調整していることが明らかになりました。住宅価格の高騰が続く中、住まいの取得を後押しするだけでなく、少子高齢化・単身化・住環境の多様化に対応する制度設計が求められています。本稿では、報道内容を補足しながら、今回の見直しがどのような意味を持つのか、そしてこれから住まいを取得する人にどのような影響があるのかを解説します。

1 延長される住宅ローン減税とは

住宅ローン減税は、年末時点のローン残高に一定割合(現行は0.7%)を掛けた金額を所得税・住民税から控除できる制度です。住宅取得の負担を軽減するため長年続いてきた制度で、2025年末に期限を迎える予定でしたが、これを 2030年末まで延長する方針です。

控除率や新築住宅13年の控除期間といった基本設計は維持される見込みで、税負担軽減効果は引き続き期待できます。

2 床面積要件が50㎡→40㎡へ

これまで原則50平方メートル以上でなければ適用できませんでしたが、これが 原則40平方メートル以上に緩和されます。

背景

  • 単身世帯・高齢夫婦世帯が増加
  • 住宅価格高騰による小規模住宅の需要増
  • マンションの平均専有面積が縮小傾向(2001年95㎡ → 2024年70㎡)

これまで「50㎡に届かないため減税を使えない」というケースが少なくありませんでした。今後はより多くの世帯が制度を利用しやすくなり、都市部のコンパクトな物件選びもしやすくなります。

3 中古住宅への支援が拡充

政府は 中古住宅のローン減税を手厚くする方向で調整しています。想定される主な見直しは次の通りです。

  • ローン減税の借入限度額の引き上げ
  • 減税期間の延長(現行は10年)
  • 子育て・若年世帯向けの上乗せ限度額を中古にも適用

補足:中古市場の変化

  • 流通量に占める中古割合:33.9%(2014年)→43.6%(2024年)
  • 省エネ・耐震性能を満たす質の高い中古物件が増加
  • 新築価格の高騰を背景に、価値観として「中古で十分」という声が拡大

欧米では中古住宅市場が成熟していますが、日本でも資産価値が維持されやすいストック型住宅市場への転換が進んでいます。

4 省エネ性能の低い新築は対象外に

2025年4月から省エネ基準への適合は義務化されましたが、政府は 2030年までにさらに厳しい基準を満たす新築のみ減税対象にする方針です。

つまり、

  • 「省エネ基準適合住宅」だけでは不十分
  • 一段高い水準の省エネ性能(ZEH等)を求める方向へ

新築住宅は「質」を確保する方向へ舵が切られ、単なる新築では減税メリットが受けられなくなる可能性があります。

5 住まい取得の判断にどう影響するか

今回の見直しは、暮らし方の多様化と持続可能な住宅政策の双方をにらんだ内容です。

影響のポイント

  • 40㎡物件でもローン減税が使える
     →都市部のコンパクトマンションの選択肢が増える
  • 中古住宅の魅力が大幅に向上
     →ローン限度額拡大で節税額が増える可能性
  • 新築は“省エネ性能の高さ”が必須条件に
     →性能が低い新築は将来売却時の評価にも影響

特に中古住宅優遇は、価格上昇が続く市場において検討者にとって大きな追い風です。


結論

住宅ローン減税の5年延長は、人口構造の変化と住宅市場の動向を踏まえた制度再編といえます。床面積要件の緩和は都市部での住まい選択の自由度を広げ、中古住宅への支援拡充はストック型住宅市場の育成を強く押し上げます。一方で、新築住宅は省エネ性能が将来の資産価値に直結し、単に「新しいだけ」の物件は選ばれにくくなる時代に入ります。

住まい選びでは、価格や立地だけでなく、
省エネ性能・将来の売却価値・ローン減税の適用可否
といった視点を重ねて判断することが重要になります。


参考

住宅ローン減税5年延長 政府調整、中古支援手厚く(日本経済新聞 2025年12月3日)


という事で、今回は以上とさせていただきます。

次回以降も、よろしくお願いします。

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