住宅ローン減税拡充で何が変わる? ケース別に見る“賢い買い方”シミュレーション(第7回)

FP
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住宅ローン減税が拡充され、中古住宅の優遇が強まり、適用期間も13年に統一される方向が示されました。制度の変化は「どの住宅を、どのタイミングで、どのように買うのが得なのか」という判断に直接影響します。本稿では住宅ローン減税の新しい枠組みを踏まえ、典型的な3つのケースで“賢い買い方”をシミュレーションします。家計の状況や目指す暮らし方によって最適解は異なるため、自身のライフプランに近いケースに重ねて読み進めてみてください。

ケース1

子育て世帯(30代):立地重視・中古×リノベで4500万円枠を活かす

条件

  • 共働き/世帯年収 900万円
  • 子ども:3歳
  • 都市部で駅徒歩10分以内を希望
  • 中古マンション 4800万円
  • リノベ費用 400万円(性能向上+内装)

ポイント

子育て世帯の4500万円枠が使える前提で、ローン残高の多い初期10年間に税額控除が最大化されます。

シミュレーション

  • 住宅ローン:5200万円(中古4800+リノベ400)
  • 限度額:4500万円
  • 控除率:年0.7%
  • 適用期間:13年

年間控除上限(初年度)
4500万円 × 0.7% = 31.5万円

ローン残高が減るほど控除額は減りますが、10年間は30万円前後の控除が期待できます。13年総額では約300〜350万円の減税効果が見込めます。

この世帯の“賢い買い方”

  • とにかく性能証明(耐震・省エネ)を確保すること
  • リノベを検討する場合、省エネ基準を満たす工事を優先
  • 早期の繰り上げ返済は控え、13年の減税を最大化
  • 都市部の立地を優先する方が資産価値の維持に有利

中古の選択肢が最も強く活きる世帯です。


ケース2

40代後半・子ども独立間近:新築と中古のどちらが得かを比較

条件

  • 夫婦2人暮らし(子は大学生)
  • 世帯年収 750万円
  • 郊外で駐車場付き戸建を希望
  • 新築:5400万円
  • 中古:3600万円 + リノベ200万円

新築を選んだ場合

  • 限度額:最大3500万円(性能基準を満たす前提)
  • 初年度控除:24.5万円
  • 13年間で約260〜300万円の総控除額

中古を選んだ場合

  • 限度額:3500万円(省エネ基準を満たす前提)
  • 初年度控除:24.5万円
  • 13年間で約260〜300万円
  • 購入価格は新築より約600〜800万円低い

結果として、
減税の差はほとんどなく、住宅価格が安い中古のほうが総費用は圧倒的に低い
という構造が生まれます。

この世帯の“賢い買い方”

  • 駐車場付き戸建を重視するなら、中古+性能向上リノベが合理的
  • 子どもの独立後は住み替えも想定し、資産価値の残りやすい場所を選ぶ
  • 固定金利(フラットなど)を選ぶと返済計画が安定

価格差を重視する40代・50代の世帯では中古が優勢です。


ケース3

単身・30代後半:コンパクトマンションで“立地と資産性”を優先

条件

  • 単身
  • 年収700万円
  • 都市部のコンパクトマンション(1LDK)を希望
  • 中古:4000万円(駅近)
  • 性能証明なし、リノベ予定なし

シミュレーション

性能証明がないため、新制度の一般枠(限度額3000万円前後)を前提にします。

  • 限度額:3000万円
  • 初年度控除:21万円
  • 13年間総額:約200〜240万円

性能証明があれば限度額は3500万円になり、控除額の総額が30〜40万円ほど増える可能性があります。

この世帯の“賢い買い方”

  • 最重要は立地(=資産価値)
  • 可能であれば、耐震・省エネの証明が取れる物件に変更する
  • 購入後の性能向上リノベで「後から限度額UP」が狙えるか確認
  • 一人暮らしの場合、賃貸 vs 購入の比較も必須

→ 購入理由が「立地×資産性」である場合、減税額より価値維持が優先されます。


ケース4

地方移住・二拠点生活を始めたい夫婦(50代)

条件

  • 世帯年収 600万円
  • 子ども独立済み
  • 地方都市での移住や二拠点生活を検討
  • 空き家再生物件:800万円+リノベ1000万円(計1800万円)

シミュレーション

性能向上リノベが行われれば省エネ基準に適合し、以下の優遇が得られます。

  • 限度額:3500万円
  • 実際の借入:1800万円
  • 控除額は借入残高に基づくため、初年度控除は約12〜13万円
  • 13年間総額で150〜180万円

この世帯の“賢い買い方”

  • リノベ費用はローンで一体化した方が減税メリットが最大化
  • 空き家は性能証明を取れる物件に限る
  • 将来売却時の価値維持を考え、利便性の高い周辺環境を選ぶ
  • 長期計画では固定金利の方が安心

地方移住は“空き家×性能向上リノベ”の相性がもっとも良いケースです。


結論

住宅ローン減税が拡充されることで、中古住宅とリノベーションの組み合わせが強く後押しされ、従来の「新築中心」の常識が大きく変わろうとしています。世帯ごとに最適な選択肢は異なりますが、共通するポイントは次の3つです。

1 性能証明が取れる物件かどうか

これが減税額・資産価値・再販性を左右します。

2 ローン残高の推移を踏まえて返済計画を立てる

年間控除額と繰り上げ返済のタイミングは慎重に考える必要があります。

3 立地と市場価値を重視する

制度の恩恵よりも、将来の資産価値維持の方が影響は大きくなります。

制度が拡充されたことで、住宅購入は「価格」ではなく「総合的な価値」で判断する時代に移行しています。自身の暮らし方や将来設計に合わせ、もっとも賢い買い方を選ぶことが、長期的な家計のリスクを減らす鍵となります。


参考

・住宅ローン減税制度の検討状況
・中古住宅・リノベーション市場に関する調査データ


という事で、今回は以上とさせていただきます。

次回以降も、よろしくお願いします。

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