住宅ローン減税がリノベーション市場を後押しする 制度拡充で広がる「中古×リノベ」の選択肢(第4回)

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住宅ローン減税の改正案では、中古住宅の限度額が最大4500万円まで拡大され、省エネ性能が確認できれば優遇が強化される方向です。この改正は、単に中古住宅の選択肢を広げるだけではなく、リノベーション市場にも大きな影響を与えるとみられています。住宅価格が高騰するなかで「中古×リノベ」という住まい方を選ぶ人が増えていますが、制度面の後押しによってその流れはさらに加速しそうです。本稿では、住宅ローン減税の拡充がリノベーション市場に与える作用を整理し、明日からの住まい選びに役立つ視点をまとめます。

1 「中古×リノベ」への追い風となる制度改正

住宅価格の上昇が続く中、多くの世帯が新築ではなく中古住宅を選び、そこにリノベーションを施す選択肢が広がっています。今回の住宅ローン減税改正案は、その流れを後押しする内容となっています。

特に影響が大きいポイントは次の通りです。

  • 性能向上リノベーションで省エネ基準を満たせば、限度額3500万円が狙える
  • 子育て世帯では最大4500万円枠と組み合わせられる可能性がある
  • 適用期間が13年に統一されることで、長期視点でのローン計画が立てやすくなる

リノベーションによって省エネ性能を向上させれば、新築に近い減税メリットを享受できる点は特に重要です。


2 性能向上リノベーションと減税の関係

住宅ローン減税の優遇枠を狙うためには、住宅が一定の性能基準を満たしている必要があります。
中古住宅でも、省エネ改修や断熱工事を行うことで基準を満たせる場合があります。

代表的な性能向上リノベーションは次のようなものです。

  • 断熱材の追加
  • 窓の二重化や高性能サッシの交換
  • 高効率給湯器の導入
  • 気密性向上工事

こうした改修によって住宅が省エネ基準を満たせば、
一般枠 → 省エネ基準枠(限度額3500万円)
への格上げが期待できます。

リノベーション費用は数十万円〜数百万円かかることがありますが、住宅ローン減税の増額分で十分に回収可能となるケースもあります。


3 「リノベ済み中古」の市場価値が高まる

今回の制度改正は、リノベーション済み物件の人気に拍車をかける可能性があります。

その理由は次の通りです。

(1)性能証明を取得しやすい

リノベ済み物件は省エネ・耐震性能が確認できる書類が整備されていることが多く、減税の優遇枠が利用しやすい状況にあります。

(2)購入後に追加工事が不要

性能が証明されていることで、そのまま入居できるメリットがあります。住宅ローンにリノベ費用を加算する必要がなく、資金計画が立てやすい点も評価されています。

(3)資産価値の下落リスクが低い

性能が確保されている中古住宅は今後の市場で評価が高まりやすく、流通性が高いことが想定されます。

制度上の優遇が明確になることで、リノベ済み中古というカテゴリーが市場でより確立していく可能性があります。


4 住宅ローンとリノベ費用の一体化という選択肢

リノベーションを前提とした中古住宅購入では、住宅ローンにリノベ費用を組み込む「一体型ローン」が有効です。

一体型ローンのメリットは次の通りです。

  • 住宅ローンと同じ低金利でリノベ費用を調達できる
  • 返済期間を住宅ローンと合わせることができる
  • 減税対象のローン残高にリノベ費用部分が加算される場合がある

ただし、一体型ローンで減税対象になるかどうかは金融機関や工事内容によって異なるため、事前確認が不可欠です。


5 リノベーション業界にも広がる波及効果

住宅ローン減税の拡充は、リノベーション市場そのものにも次のようなプラス効果が期待されます。

(1)性能向上工事の需要増

省エネ性能や耐震性能を満たすための工事が増えることで、リノベーション事業者の技術向上やサービス拡大が進む可能性があります。

(2)流通市場との連携が強まる

不動産仲介会社とリノベ事業者が連携し、購入からリノベまで一体でサポートするモデルが増えていくと考えられます。

(3)地域の空き家活用にも波及

性能向上リノベーションを行った上で市場に流通させる取り組みが広がれば、空き家の再生や地域の活性化にもつながる可能性があります。

制度改正が、住宅ストックの再利用を促す「循環型の住宅市場」への転換点になる可能性を秘めています。


6 注意が必要なポイント

制度の後押しがあるとはいえ、リノベーションを前提とした住宅取得には注意点もあります。

  • 省エネ基準を満たすための工事内容を正確に把握する必要がある
  • 証明書の取得手順を誤ると優遇枠を受けられない
  • 工事期間が長くなると引越しや仮住まいの負担が増える
  • 物件価格+工事費で予算オーバーになるケースがある

特に証明書関係は「事後では取得できない」ものが多いため、購入前から計画を立てておくことが重要です。


結論

住宅ローン減税の改正案は、中古住宅の購入とリノベーションの組み合わせを強く後押しする内容となっています。性能向上リノベーションによって省エネ基準を満たせば、限度額3500万円・4500万円の優遇が受けられる可能性があり、住まい選びの幅は大きく広がります。

さらに、リノベ済み中古の市場価値の上昇や、リノベ業界全体への波及効果も期待され、住宅市場の構造変化を促す契機となる可能性があります。その一方で、性能証明の取得や工事内容の整理など、事前準備の重要性はこれまで以上に高まっています。

中古住宅の取得にリノベーションを組み合わせることで、住まいの価値を自ら高めることができる時代です。制度の恩恵を最大化するためにも、計画段階から丁寧に準備を整えることが重要です。


参考

・住宅ローン減税に関する政府・与党の改正検討資料
・リノベーション協会等の性能向上工事に関するデータ


という事で、今回は以上とさせていただきます。

次回以降も、よろしくお願いします。

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