会議費や交際費について、「証憑はどこまで残しておけば良いのか」という疑問は、多くの事業者が抱えています。
厳密にやろうとすると手間がかかりすぎますし、かといって何もしないのは税務調査で不安が残ります。
特に、交際費の1万円基準が導入されて以降、
- 金額が小さいから
- レシートがあるから
という理由だけで、証憑整理が軽視されてしまうケースも見受けられます。
本稿では、税務調査の実務を踏まえ、最低限どこまで整理しておくべきかを現実的なラインで整理します。
証憑整理の目的を誤解しない
まず押さえておきたいのは、証憑整理の目的です。
証憑は、
- 税務署に見せるため
- 形式的に揃えるため
にあるのではありません。
本来の目的は、その支出が業務上必要だったことを、後から説明できるようにすることです。
この視点を外すと、
- 書類は揃っているが説明できない
- メモはあるが内容が空疎
といった状態に陥りやすくなります。
最低限必要な証憑は「レシート+α」
会議費・交際費について、最低限必要となるのは、次の2点です。
- 金額・日付・支払先が分かるレシート等
- その支出の目的が分かる情報
レシートだけでは、「何のための支出か」は分かりません。
そのため、レシートに紐づく補足情報が重要になります。
レシートに何を書いておくべきか
実務上、レシートの裏や経費精算システムの備考欄に、次のような情報があると十分です。
- 会議や飲食の目的
- 参加者(会社名・役職・関係性が分かる程度)
- 社内か社外かの区分
すべてを詳細に書く必要はありません。
後日、「これは何の支出でしたか」と聞かれたときに、自分で思い出せるかどうかが基準になります。
会議費と交際費で求められる整理の違い
会議費の場合
会議費で特に重要なのは、「会議性」です。
- 議題や目的が分かるか
- 業務との関連性が説明できるか
簡単なメモで構いませんが、
「打合せ」「会議」だけの記載では弱く、
「○○案件の進捗確認」「△△契約条件の協議」
といった程度の具体性があると安心です。
交際費の場合
交際費については、
- 誰との関係構築か
- なぜ必要な支出だったか
が説明できるかがポイントになります。
交際費であること自体は否定されませんが、
「私的な飲食ではない」ことが説明できないと問題になります。
やりすぎなくてよい証憑整理
実務上、次のような対応まで求められることは通常ありません。
- 議事録を毎回作成する
- 参加者全員の署名を取る
- 写真や資料を保存する
税務調査は、「合理的な説明ができるか」を見るものであり、
完璧な証明を求める場ではありません。
やりすぎると、事務負担が増えるだけでなく、継続できなくなります。
危険なのは「何も残っていない状態」
一方で、最もリスクが高いのは、
- レシートしかない
- メモも記憶もない
という状態です。
この場合、税務調査では、
「説明できない=業務関連性が不明」
と判断されやすく、会議費・交際費いずれであっても否認リスクが高まります。
今後は「説明前提」の整理がより重要に
交際費課税の見直しが検討されている中で、
今後は、
- 金額基準
- 勘定科目
よりも、
- 実態
- 説明可能性
が、より重視される方向に進むと考えられます。
証憑整理も、「税務署に見せるため」ではなく、
自分が説明するための準備として考えることが重要です。
結論
会議費・交際費の証憑整理は、完璧を目指す必要はありません。
しかし、「後から説明できる状態」を最低ラインとして維持することは欠かせません。
- レシート+簡単なメモ
- 目的と参加者が分かる程度の情報
これだけでも、税務調査での説明は大きく変わります。
今後の税制改正の流れを踏まえると、証憑整理は「守り」ではなく、「説明力を高めるための備え」として位置づけておくことが重要です。
参考
・税のしるべ「8年度与党大綱で示された今後の税制改正の方向性、交際費課税は9年度改正で見直しを検討」
・令和8年度 与党税制改正大綱
・法人税法(交際費等の損金不算入関係)
という事で、今回は以上とさせていただきます。
次回以降も、よろしくお願いします。
