会社や法人の設立日は、税務・会計・社会保険の実務において重要な意味を持ちます。
これまで設立日は、法務局が申請を受け付けた日、すなわち「開庁日」に限定されていました。そのため、1月1日などの休日を設立日にしたいと考えても、制度上は不可能でした。
しかし、令和8年2月2日から施行される商業登記規則等の改正により、一定の要件を満たせば、行政機関の休日を会社等の設立日として登記簿に記録することが可能となります。
本記事では、この新しい特例制度の概要と、実務上の注意点を整理します。
これまでの設立日の考え方
会社等は、設立の登記をすることによって成立するとされています。
そのため、会社の設立年月日は、法務局が設立登記申請を受理した日がそのまま記録されてきました。
法務局は土日祝日や年末年始には業務を行わないため、これらの休日を設立日として登記簿に記載することはできませんでした。
実務上は、記念日として1月1日を希望していても、実際の設立日は12月28日や1月4日になる、といったケースが一般的でした。
今回新設された「休日指定」の特例とは
今回の改正では、設立登記の申請について特例が設けられました。
一定の条件を満たすことで、申請者が指定した行政機関の休日を「登記の日」かつ「会社等成立の日」として登記簿に記録することが可能となります。
これは、登記制度上の取扱いを柔軟にし、申請者の希望を反映できるようにする趣旨の改正といえます。
特例を利用するための要件
この特例を利用するためには、次の4つの要件をすべて満たす必要があります。
第一に、登記が成立要件となる会社等であることです。
株式会社や合同会社など、設立登記によって成立する法人が対象となります。
第二に、設立登記申請書に、特例を求める旨と指定する登記日を明記することです。
単に申請するだけでは足りず、「指定登記日」を明確に記載する必要があります。
第三に、指定する登記日が行政機関の休日であることです。
土日祝日や年末年始などが該当します。
第四に、指定登記日の直前の開庁日に申請を行うことです。
この要件が、実務上もっとも注意を要するポイントとなります。
「直前の開庁日申請」の具体的な意味
指定登記日の直前の開庁日に申請する必要がある点については、オンライン申請や郵送申請の場合でも例外はありません。
申請書類が、開庁時間内に法務局へ到達し、その日の受付として処理されることが求められます。
例えば、1月1日を設立日として指定する場合、法務局は12月29日から休庁となります。
このため、直前の開庁日は12月28日となり、この日中に申請が受理されなければなりません。
年末は郵送遅延やシステム混雑も起こりやすく、申請スケジュールの管理がこれまで以上に重要になります。
実務への影響と活用場面
この特例により、記念日として意味のある日付を設立日に設定しやすくなります。
特に次のような場面では、実務上の選択肢が広がります。
・1月1日を事業年度の起点としたい場合
・ブランド戦略や対外的な説明で設立日を重視する場合
・グループ再編などで日付の統一性を重視する場合
一方で、申請日の管理を誤ると、特例が適用されず、通常の受付日が設立日として記録される可能性があります。
制度を理解したうえで、慎重な準備が求められます。
結論
商業登記制度の今回の改正により、会社等の設立日について、これまで不可能だった「休日指定」が可能となりました。
制度自体はシンプルですが、直前の開庁日に確実に申請を完了させるという実務上のハードルがあります。
設立日が持つ意味は、税務・会計・社会保険の起点にも関わる重要な要素です。
今後は、この特例を正しく理解し、設立スケジュールをより戦略的に設計していくことが求められるでしょう。
参考
・税のしるべ
・商業登記規則等の一部を改正する省令(令和8年施行)
・法務省公表資料(設立登記に関する特例の概要)
という事で、今回は以上とさせていただきます。
次回以降も、よろしくお願いします。
